「不正はなかった」報告書に大手監査法人が猛反発!有力ベンチャー「あわや上場廃止」騒動の顛末Photo:PIXTA

企業の決算に関して、不正やトラブルなどが報じられることがある。そんなとき、企業の中では何が起こっているのか。経理実務経験のある筆者が、“中の人”の苦悩を感じた会計ニュースを厳選して解説する。3回連続でお送りするシリーズの2回目は、有力スタートアップで浮上した会計不正疑惑についてお伝えする。(公認会計士 白井敬祐)

勢いに乗るスタートアップで
会計不正疑惑が浮上した理由とは?

 経理の視点で、“中の人”の苦労や怒りが感じられた印象的な会計ニュースを3回にわたって紹介していきます。前回は、いなげやの2度の決算訂正騒動について解説しました。2回目となる今回は、会計問題が浮上した結果、あわや上場廃止という事態にまで陥ってしまったニュースを取り上げたいと思います。

 そのニュースとは、電気自動車(EV)充電事業などを行うスタートアップ企業、ENECHANGE(エネチェンジ)の会計不正問題です。

 エネチェンジは2015年4月に設立されたスタートアップ。わずか5年で上場、21年には時価総額1000億円を突破し、勢いに乗っていた企業でした。

 そんな同社が、23年12月期の決算で不正を行った疑惑が浮上したのです。

有力スタートアップがあわや上場廃止の緊急事態
大手監査法人が断固「不正」を主張!

 エネチェンジの23年12月期の決算をあずさ有限責任監査法人(以下、監査法人)が監査しているところに、「エネチェンジが不正をしている」という外部通報が舞い込みました。そのため、監査法人が調査したところ、以前受けた説明と違う事実が判明。不正の疑いがある旨をエネチェンジに通達し、外部調査委員会を開くべきとしました。