大多数の台湾人の
望みは「現状維持」

 では、中国が統一を目指す中で、台湾の人々はいま何を考えているのでしょうか。前にも指摘した通り、大多数の台湾人の望みは国家としての独立でもなく、中国への従属でもない「現状維持」です。共産党独裁国家の中国には絶対に支配されたくはありません。同時に中国は大事な商売相手でもあるので、関係を悪化させたくもありません。

 よって、「この2つが両立している現状が最も望ましい」との結論になります。現状が、少しでも一方に過度に振れると、揺り戻そうとする力学が働きます。

 詳しく言えば、台湾世論は上記2つの要素のバランスで動き、それぞれを体現する政党があります。整理すると以下になります。

(1)香港のように中国共産党に支配されるリスクがある以上、中国とは仲良くしすぎてはいけない。時には中国に対して強い態度で臨まなければならない。

(2)一方で、貿易関係の深い中国とは、ある程度は仲良くしないと台湾経済がもたない。だから中国を怒らせてもいけないので、関係を良く保つ態度も大事だ。

 大まかに言えば(1)を重視するのが与党の民進党で、(2)を重視するのが野党の国民党です。

 2024年1月の台湾総統選挙について言えば、(1)の観点が重視され、台湾の人々は中国に対抗する姿勢が明確な民進党の頼清徳を総統に選んだと解釈できます。

 一方で人々には現実の暮らしがあります。生活にはお金が必要です。つまり経済的な要因であり、貿易での結びつきが強い中国との関係が重要になってきます。このため日本の国会にあたる立法院選挙では(2)の観点が重視され、頼清徳の民進党ではなく、中国に近い野党の国民党が第一党になったと解釈できます。