新入社員がアルムナイをうまく“活用”するために
鈴木さんが代表を務める株式会社ハッカズークは、企業とアルムナイをつなぐクラウド型システム(*2)を開発・運営し、アルムナイを取り巻く最新情報や企業が連携するノウハウ、海外の事例などをオウンドメディア(*3)で発信している。
たとえば、A社を知り尽くしたアルムナイと、A社をこれから知っていく新入社員――双方が、“スーパー利己的”になって寄り添うためにはどうすればよいか?
*2 クラウド型システム『Official-Alumni.com』は、企業が効率よく運用できる管理機能に加えて、登録するアルムナイのメリットとなるアルムナイ同士のチャットや名簿検索、さまざまな募集ができる機能などが簡単に利用できるツールになっている。
*3 退職で終わらない“企業と個人の新しい関係”を考えるメディア『アルムナビ』。
鈴木 まず、A社が「退職者=裏切り者」という考えを持たないことが大前提です。また、A社を退職したアルムナイが、そのA社に対して好意的であることも重要です。新入社員は、社内の先輩社員や管理職と同じようにアルムナイと付き合うことで、自分がA社に入社した目的を達成するために経験や知見を増やしたり、自分のキャリアを客観的に見る機会を持っていけたりするといいです。言葉は少し乱暴ですが、アルムナイとの関係をうまく「活用」すること――それに尽きると思います。アルムナイも、熱い想いや志を持った若い人たちとの接点から何かを吸収できることでWIN-WINになったり、古巣に貢献したりする機会を求めている人もいます。
そもそも、昨今の若い世代は、辞めた人を裏切者扱いする会社を快く思いません。自分が辞めたときに、A社が自分にどう向き合ってくれるかを、A社とアルムナイの関係性の中に見出し、それが将来、自分がアルムナイとなったときに後輩社員とどう付き合っていくかを左右します。会社側は、必要に応じて、新入社員とアルムナイの接触機会をつくること――そうした環境下で、新入社員は、仕事へのモチベーションを高めたり、自分のやりたいことを成し遂げたりするために、アルムナイがどうしたら自分に協力してくれるかを考えることが大切です。それは、相手がアルムナイに限らず、先輩社員であっても、上司であっても同じこと。スーパー利己的な新入社員がA社での目的を達成するために、社内の人だけではなく、社外のアルムナイとの関係も「活用」する――その状況が理想だと思います。
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アルムナイが新入社員を成長させれば、A社にとってもありがたいことだろう。しかし一方で、鈴木さんは、アルムナイと会社の関係は義務的に生むものではなく、アルムナイ一人ひとりの意思とそれぞれの会社の方針によるものだと説く。
鈴木 以前、この「HRオンライン」の連載(*4)でも書きましたが、退職した自分がどういう立場になるかはその人の考え方次第で、会社側がアルムナイに何かを強制するのはおかしな話ですし、強制することなんてできません。逆に、「我が社はアルムナイとはいっさい付き合わない」という会社があったとして、アルムナイや第三者がその会社の方針を強制的に変えることはできません。また、最近はSNSで「辞めた会社なんかと絶対付き合いたくない!」「辞めた会社と接点を持つのは気持ち悪い」といった声も散見しますが、その考えや姿勢が自分の価値観であれば、それでいいのです。ただ、企業側も個人側もその姿勢でいた人は、後々その考えが変わった時に信頼関係を再構築するのは簡単ではなくなるでしょう。
*4 「HRオンライン」の鈴木さんの連載記事一覧はこちら。