「偉い人を役職をつけて呼んだり、若手を呼び捨てしたりするのは、古い文化です」
そう語るのは、これまでに400以上の企業・自治体・官公庁等で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、時代遅れな体質をもつレガシーな組織には共通する文化や慣習、空気感があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変えていけると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな体質」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、組織の体質に悪影響を与える「人の呼び方」について指摘します。
役職名をつけて呼び合う組織
職場での呼び方には、組織によって違いがある。
若手を呼び捨てにしたり「〇〇ちゃん」と呼んだり、職位の低い人にはタメ口で話したり。なかには役職者は「○○部長」「○○課長」など職位をつけて呼ぶ(役職呼称)職場も少なくない。メールの文面も同様だ。
いずれも良い面も悪い面もある。
役職呼称には面倒くささを感じる反面、誰に意思決定権があるのかがわかりやすいメリットもある。指示や意思決定を仰ぐ相手や、指揮命令系統がわかりやすく、迷いにくい(一方で職位も多様化・複雑化していて、課長心得、主事、主席部員、シニアエキスパート、ディレクター、チーフテクニカルアーキテクト、エバンジェリストなど責任範囲や権限はおろか、そもそもどんな役割を担っているかもわからない名称が増えているのは悩ましいが……)。
とくに統制管理型がうまく機能している組織や分野においては、役職呼称の方が都合の良いケースもある。
役職で呼ばれるうちに「自分は偉い」と思い込む人たち
反面、役職で呼ばれ続けることにより「自分が偉い」なる幻想や勘違いをする人もいる。
これは統制管理型の体質を助長するだけでなく、マウンティング行動やハラスメントを生み、メンバーや社外とのコミュニケーションや組織のガバナンスに悪影響を及ぼすこともある。
また、役職を調べる手間もかかるだろう。当然、文面やメールに記す手間もかかる。
役職変更の際はさらに面倒だ。変更に気づかず前の役職で相手を呼んでしまい、無駄な失礼を生む面倒くささもある。とりわけ日本の大企業の管理職は複数部署の兼務・兼任が多いと言われており、同じ人でも本務先と兼務先で役職が異なるケースもあるから油断ならない。
確認点が増えれば、それだけミスも増える。重箱の隅をつつくような指摘をし、マウンティングするような人も出てくる。こうして、無駄なコミュニケーションのトラブルが増える。
「さん」づけで呼び、敬語で話す組織へ
組織の考え方にもよるが、個人的には誰に対しても「さん」づけで呼び、敬語を用いるフラットなコミュニケーションが心地よく感じる。
職位によるハードルを低くし、フラットな対話や共創をする文化を醸成しやすい。相手の職位に応じて態度を変えるなどの行動を抑制する、心理的な効果もある。
もちろん、役職変更による呼び間違いも回避できる。最近は定年後の雇用延長により、同じ職場に居ながらにして職位がなくなる人も少なくない。昨日まで「部長」「課長」とつけて呼んでいた人を「さん」で呼ぶときの違和感。役職で呼ばれなくなったときに感じる一抹の寂しさもなかなか切ない。
はじめから「さん」づけで呼び合っていれば、そんな気まずさも感じずに済む。