「時代遅れな慣習を見直していくことで、“組織の体質”を現場から変えていくことができます」
そう語るのは、これまでに400以上の企業・自治体・官公庁等で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、時代遅れな体質をもつレガシーな組織には共通する文化や慣習、空気感があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変えていけると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな体質」を変えるために現場で明日からできることを100個紹介しています。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、お盆明けの職場で「よく見る光景」について指摘します。

「お盆休み」などの長期休暇明けに「職場へのお土産」を求める組織が崩壊していく納得の理由イラスト:ナカオテッペイ

休み明けに「お土産」を配る組織

 年末年始などの長期休暇や、有給休暇で帰省や旅行をした際に、お土産を買って休み明けに配る職場がある。
 あるいは本人や家族の病気などによる休暇明けに、職場の人たちにお菓子を配ってお詫びの意を示す職場もある。

 これまた良し悪しである。お土産やお菓子は雑談などカジュアルなコミュニケーションのきっかけにもなる。筆者もどちらかと言うと好きで、旅先で美味しそうなお菓子を見つけては買って職場で配ることがある。
 しかしなかには、そもそも本人の好意による行動のはずが、

「休暇明けはお菓子などを買ってくるのが常識」
「全員の席を回って手渡すべきだ」

 といった圧力を感じる組織もある。そのような謎のマナーを振りかざす人もいるから面倒極まりない。
 在席タイミングを狙って声かけしたり、メモを残さなければならなかったり。リモートワークを取り入れている職場においては、お土産を手渡すためだけに出社するなどの謎行動も発生する。

 好意の行動がルールとなり、皆を縛り付けている組織もあるのだ。

「休む=謝るべきこと」の同調圧力がもたらされる

 病欠後の復帰となると、お菓子を選ぶのも買うのも大変である。体調不良者やその家族にそんな気遣いをさせるくらいなら、その分ゆっくり休んでもらうか、その神経を仕事に注いでもらうほうが健全であろう。

 とりわけ役職者やベテランがそれをやってしまうと、今後は他の人も病気で休んだ際にお菓子を配らなければいけない暗黙の同調圧力が職場にもたらされる。
 筆者の知人はこう語っていた。

「(病欠明けに)夫がお菓子を買っていくのを全力で止めようとして喧嘩した」

 ナイスである。
 行為そのものは決して悪くはないが、たとえ本人はよくとも、気遣いを強要する文化、ルール遵守の体質を助長してしまうことが問題なのだ。

 有給休暇や病気休暇は労働者の権利である。堂々と取得すればよいし、本人が引け目を感じる必要など本来はないはずだ。
 もちろん、その間にフォローしてくれた仲間への感謝の気持ちは大切だが、「迷惑をかけたのだから、お礼が必要だ」といった罪悪感を抱く必要はない。
 
その感情が「休む=他人に迷惑をかける行為」との認識を職場に蔓延させ、休むことがまるで迷惑であるかのような空気を醸成してしまう。