「仕事が怖いと感じたとき、対処法があります」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「仕事が怖い!」と感じたとき、精神科医が教える対処法とは?Photo: Adobe Stock

「怖い」と思う瞬間

「仕事がツラい」って感じることはあるけど、「仕事が怖い」と感じたことはありませんか?
 朝起きた瞬間から「今日も仕事に行くのが怖い……」って思ってしまう。

 仕事のことを考えると不安になって、ドキドキと心臓が高鳴って、吐き気やめまい、手がふるえてしまっている。

 そんなとき、どうしたらいいんだろう?

 それは「ツラい」から、仕事が「怖い」に変わったからなのかもしれません。
 今回は、仕事が怖くて仕方なくなったときに、あなたに知ってほしいことを共有します。

1.「怖い」と感じることは普通のこと

 まず知っておいてほしいのは、仕事が「怖い」と感じるのは、決しておかしなことじゃないということです。
 どんな人でも、仕事ではストレスやプレッシャーを感じるものです。

 むしろ、まじめに取り組んで、仕事に向き合っているからこそ仕事が怖いと感じるようになってしまうのです

 だから、そんな恐怖心を感じてしまう自分を、「自分は弱いんだ」とか、「甘えてるんだ」なんて思わなくても大丈夫です!
 怖いと感じている自分の感情とまずは向き合ってみましょう。

2. 何が怖いのか、ちょっと立ち止まって考えてみる

 次に、「何がそんなに怖いの?」と自分に問いかけてみてください。
 ミスをするのが怖い、上司に怒られるのが不安、職場の雰囲気に耐えられない、あなたが怖いと感じていることはあなたにしかわかりません。

 人間関係や仕事のプレッシャー、業務の内容など、さまざまな要因が考えられるからこそ、まずは自分の感情を動かす「モンスター」をきちんと把握してみましょう

 人間の恐怖心は知らないことから生まれます。怖さの正体を知ることで、その恐怖の感情が整理されて、「あ、これが自分を怖がらせていたんだ」と理解することが、安心につながることもあります。

3. まずは小さなことを心がけよう

 仕事が怖くなると、失敗やミスが怖くなって、ついつい頑張りすぎてしまうことがあります。
 ミスを取り返すために過剰な仕事を抱えすぎないで、まずは小さなタスクをこなすことから、小さな成功を積み上げることを意識しましょう。

「今日はメールの返信だけしよう」とか、「机の周りを整頓しよう」といった具合に、手の届く範囲で、目に見える変化をつくることからスタートすることが大事です

 小さなことでも、一つずつ終わらせることで「できた!」という達成感を感じることができます。
 無理せず、自分に優しく進めていきましょう。

4. 誰かに話してみる

 怖い気持ちを一人で抱え込むのはつらいですよね。
 そんなときは、誰かに話してみるのもいい方法です。

 人間は感情をだれかに共有してもらったり、口に出して話すことで恐怖心を減らすことができます
 家族や友人などに「実は、仕事がちょっと怖くてさ…」と話すだけでも、驚くほど心が軽くなることがあります。
 自分の気持ちを誰かに話す、単純だけどとても効果的だったりするので、まずは口から恐怖を出してみましょう。

5. 仕事から逃げる時間もつくってみよう

 忙しい日々だと、ついつい仕事が人生の中心のように感じてしまうことがあります。
 そんな時には自分を客観的に見るなど、ちょっと視点を変えてみましょう

 ずっと仕事のことを考えていると息が詰まるし、何より恐怖心が増してしまいます。

 趣味に打ち込んだり、家族や友達と楽しい時間を過ごしたり、ただ自然を感じに公園や森林に赴くなど、リラックスできる時間を取って仕事以外のことに意識を向けることで、仕事に対する「怖い」という感情が少しだけ薄れることもあります。
 時には日常から逃れて、人生の中心を仕事から外してみましょう。

6. ほんとうに大切なのはあなた自身

 仕事が怖いと感じるときこそ、自分を追い込まずに「やるだけやった」と自分に優しく言い聞かせることが大切です。
 どんな人でもやれること、できることには限界があります。

 それにもかかわらずにずっと無理をしてしまうと、心も体も疲れてしまいます。
「怖い」という感情は逃げられない、追い詰められるという状況でこそ悪化します。

 そんなときこそ、迷ったときには「自分を守る」という意識をすることで、つぎに進むべき道が見つかりやすくなります。
「怖い」という不安定なときこそ、何がほんとうに大切なのか、あらためて振り返ってみてください。

 以上、6つの話をしてみました。

 仕事を「怖い」と感じること、それは人間の生理的な現象のひとつで、決して甘えや弱さではありません
 その感情は、人間であれば誰にでも訪れるものですし、自分の気持ちを無理に否定しないで向き合うことがなにより大切です。
 怖さを感じたときこそ、自分のことを見る視点を変えるチャンスでもあるのです。

 ときには逃げたり、守ることで自分を癒せることもあります
 あなたには乗り越える力がちゃんとあります。まずは自分を見る視点から意識してみてくださいね。

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。