「過去の恥ずかしい失敗を思い出さないための方法があります」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

【精神科医が教える】「過去の恥ずかしい失敗」を思い出さないための方法・ベスト3Photo: Adobe Stock

「恥ずかしい」はムダ?

 みなさん、誰しも一度は「ああ、なんであんなこと言っちゃったんだろう……」と、過去の失敗を思い出しては恥ずかしさで悶絶することがありますよね?
 私もあります。正直に言えば、そんなことがしょっちゅうです。

 だけど、そんな過去のミスを引きずってしまうのは「実は無駄なエネルギーを使っている」ということを知っていましたか?
 そんな過去を思い出さないための方法について共有したいと思います。

なぜ「過去の失敗」を引きずっちゃうの?

 まずは、なぜ私たちはそんなに過去の失敗に囚われてしまうのでしょうか。

 私たちが記憶するときには「ネガティブ・バイアス」というものが働き、ポジティブな出来事よりもネガティブな出来事のほうを無意識に強く覚えてしまうことがあります。

 これは進化の過程で身についた生存本能の一部とも言われていて、失敗がすぐに命取りになるような時代も長かったので(原始時代など)、失敗や危険をしっかり覚えて、次に同じミスをしないようにするためなんです。

 でも、現代社会では命に関わる失敗ってそんなにないですよね?
 なので、過去のミスや失敗を思い出し過ぎると不安になっちゃうし、こだわりすぎるのは、今だとちょっとマイナスにしかならないのです。

失敗を引きずらないための「3つの対処法」

 さて、そんなマイナスになってしまう過去の恥ずかしい失敗や体験を引きずらないようにするにはどうすればいいんでしょうか?
 いくつか方法について共有します。

1. メタ的に捉える

 あなたが恥ずかしいと感じる記憶のうち、その「事実」だけを意識して見ることが大切です。「人前で恥をかいた」「誰かとケンカした」、それだけを考えて、感情や気持ちは抜きにしてその事実だけを捉えて、紙に書いたりまとめることで輪郭がハッキリします。出来事を論理的に捉えることで「そんなことか」と納得させられる場合があります。

2. リフレーミング

 自分の失敗を客観的に見るのって難しいですよね。でも、あえて過去の失敗を友達や親など、他の人の視点になった気持ちでその出来事を見てみましょう。実際、他の人はあなたが考えるほど気にしていないことがほとんどです。「まあ、そんなこともあるよね」と自分でも言えるようになれば、ずいぶん楽になると思います。

3. 感情は否定しない

 人間は完璧じゃありません。ミスをするのは当たり前。だから、自分に優しくしてあげる気持ちは大切です。ですが、無理してポジティブに振舞ったり、忘れようと意識してしまうとそれだけで強く意識してしまい、つらくなってしまうこともあるでしょう。ですので「恥ずかしかった」「いやだった」という気持ちを否定せず、その感情はそのままで受け入れてあげるようにしましょう。

 以上のように、ムリなく捉えることで、ゆるりと受け入れるようにしていきましょう。

 過去の失敗を引きずらないためには、無理をして忘れようとしたり、否定するのではなく、いつか受け入れたり、忘れられるようにゆるい気持ちで捉えていくことが大切です。
過去は変えられないけれど、その影響力はいまのあなた次第で変えることはできます。

 だから、次に「ああ、またあの失敗を思い出しちゃった……」と感じたときは、この方法を試してみてください。きっと、心が軽くなるはずです!

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。