膨大な手間と経費に圧迫されて、「自分でやったほうが効率がいい」と人材教育を諦めてしまう経営者は多い。法律事務所を経営する代表弁護士が「任せて育成する技術」を説く。本稿は、井上晴夫『任せる社長ほど会社はうまくいく 忙しい経営者は社長失格』(現代書林)の一部を抜粋・編集したものです。
人が育たないと嘆く経営者
に決定的に足りない視点
任せることにはそれなりの覚悟が必要です。最初はうまく任せられないことが多く、かえって社長の手間が増えます。顧客からのクレームも増えます。
この段階では売上は増えないのに経費ばかり増えて経営が苦しくなります。経営の数字上は1人でやっているほうが良くなるでしょう。
ここで人に任せるのを止める人がたくさんいます。1人でやるのか、複数人でやるのか。事業をする上で、自分のやりたいことが根っこにあります。
挫けそうになった時は、自分のやりたいことに遡り、よく考えてみてください。何度失敗してもトライする粘り強さが必要になると思います。
この段階を乗り越えると1人でやっている時よりも売上が増え、利益率はケースバイケースですが利益額が増えます。
そうしますと、会社としての信用が増しますし、社長の仕事の内容、意識が変わってきます。
このように、任せて失敗しては、さらに任せることにトライして、従業員が自走できる段階まで成長すれば経営は一気に楽になります。
そこまで我慢できずに任せることを止めてしまう社長、上司がいかに多いことか。
そもそも従業員に任せて自分は何を目指そうとしていたのか、そこをよく考えてみるといいでしょう。
任せることがうまくいかない経営者に向けてこのように聞いてみたいです。
「人を育てる気があるのか?」
これはある意味核心を突いていて、ズシリと心に響いてくる経営者が多いと思います。
私のいる弁護士業界では、人を育てる気がないという経営者弁護士が多数います。これは、業界内で、仕事は1人でするもの、他人を雇うのは自分が楽をするためだと考えている弁護士が多いことに起因していると思います。
問題が起こったときが
上司の腕の見せどころ
他の業界でも、従業員はその労働力を搾取する対象であって、従業員の成長は考えていないという空気感のある業界はたくさんあると想像します。
本当は人を雇う目的は、経営理念、ビジョンを実現するためにあるはずです。そのビジョンに向かって一緒にやっていく人を見つけるために人を雇っているはずです。
人を育てて、一緒に仕事をして、みんなで幸せになっていこうという気持ちになることが大きな一歩になると思います。