ジャンルを問わず成功する人が
共通して持つ「やり抜く力」

 もうひとつの重要な非認知能力として挙げられるのが、「やり抜く力」です。この能力は、ペンシルバニア大学の著名心理学者、ダックワース准教授が「成功を予測できる性質」として発表して以来注目を集め、GRIT(グリット)とも呼ばれています。

 ダックワース准教授のTEDトーク「成功のカギはやり抜く力」の再生回数は630万回以上に上り、大きな反響を呼んでいます。ダックワース准教授は、このやり抜く力を「非常に遠い先にあるゴールに向けて、興味を失わず、努力し続けることができる気質」と定義しました。このやり抜く力もまた、「自尊心」を計測したのと同様、調査対象者に12問ほどの質問に答えてもらうことで簡単に数値化できます。

 陸軍士官学校の訓練に耐え抜くことができる候補生は誰か。英単語の全国スペリングコンテストで最終ラウンドまで残る子どもは誰か。貧困地域に配属された新米教師のうち、学年末にもっとも子どもの学力を上げることができるのは誰か。それぞれまったく異なる状況で、求められる能力は一見バラバラのようにも思えます。

 しかし、ダックワース准教授は、「成功する人」を事前にかなり高い精度で予測することができました。「やり抜く力」が高い人は、いずれの状況でも成功する確率が高かったからです。

 さらに、ダックワース准教授は、才能とやり抜く力の間には相関関係がないことも明らかにしています。才能があっても「やり抜く力」がないがために、成功に至らない人が少なからずいたのです。