自制心は大人になってからでも
筋肉のように鍛えられる

 最近の研究では、認知能力の改善には年齢的な閾値が存在しているが、非認知能力は成人後まで可鍛性のあるものも少なくないということがわかっています。では、非認知能力を鍛えて伸ばすためにはどうすればよいのでしょうか。

 重要な非認知能力のひとつとしてご紹介した「自制心」は、「筋肉」のように鍛えるとよいと言われています。筋肉を鍛えるときに重要なことは、継続と反復です。腹筋や腕立て伏せのように、自制心も、何かを繰り返し継続的に行うことで向上します。

 たとえば、先生に「背筋を伸ばせ」と言われ続けて、それを忠実に実行した学生は成績の向上がみられたことを報告している研究があります。

 もちろん、背筋を伸ばしたことが直接、成績に影響を与えたわけではありません。「背筋を伸ばす」のような意識しないとしづらいことを継続的に行ったことで、学生の自制心が鍛えられ、成績にもよい影響を及ぼしたのでしょう。

 また、心理学の分野でも、「細かく計画を立て、記録し、達成度を自分で管理する」ことが自制心を鍛えるのに有効であると多数の研究で報告されています。

 かつて、「レコーディングダイエット」なるものが流行したことがありました。このダイエット法で減量に成功する人が多かったのは、「日々摂取した食事とそのカロリーを継続的に記録し、体重を確認する」ことを通じて自制心が鍛えられたという面もあったのではないかと私は考えています。