地域住民との協力体制を構築することも重要です。観光客と地元住民が共存できる仕組みを作るためには、地域住民の意見を取り入れ、観光業者と連携することが必要です。地域住民が観光業に積極的に関与すれば、観光地としての魅力を高めることもできます。例えば、地域コミュニティと連携した観光プログラムの開発や、地域住民によるガイドツアーの提供などが挙げられます。

必ずしも効果が現れていない
オーバーツーリズム対策

 オーバーツーリズムに悩む観光地では、実際にさまざまな対策が取られています。

 ギリシャのサントリーニ島では観光客の急増により、島のインフラが限界を迎えており、地元当局は訪問者数を制限する措置を検討しています。ニュージーランドでは観光税の導入が進められており、収益を観光地の保護と管理に充てることが計画されています。

 しかし、オーバーツーリズム問題の対策が必ずしも有効に機能していない例もあります。

 例えば、ベネチアでは観光税を導入し、観光客数を抑制しようとしましたが、観光客の減少にはつながりませんでした。観光税を引き上げたにもかかわらず、訪問者数は依然として高い水準を維持しており、地域への環境負荷やインフラの過剰使用は続いています。こうした例では、少し価格を上げるだけでは観光客の流入を効果的に制限することは難しいことがわかります。

 また、教育や啓発活動も必ずしも効果を発揮しているわけではありません。アムステルダムで2023年に観光客向けに行ったマナー啓発キャンペーンでは、特に若いイギリス人男性を対象に、乱暴な行動を抑制するための動画を制作し、観光客に「迷惑をかけるなら来ないでください」と訴えました。しかし、この取り組みは期待したほどの効果を上げず、観光客の行動に大きな変化は見られませんでした。その結果、アムステルダム市は新設ホテルの建設を禁止するなど、さらなる対策を講じることになりました。