住民から観光客への抗議は
海外でも数多く発生

 オーバーツーリズムが問題になっているのは日本国内だけではありません。地域住民が観光客を拒絶する例が、海外でも多数見られます。

 例えばオランダの首都アムステルダムでは、特定の観光客に訪問しないよう促すキャンペーンが2023年に始まり、過剰な観光客による地域への影響を抑制しようとしています。またイタリアのベネチアでは、反観光グループがクルーズ船の乗客の上陸を妨害するデモを行うほどで、観光客による環境や地域生活への影響が深刻化しています。

 サグラダ・ファミリア教会などの名所が数多くあるスペインのバルセロナでも同様に、2023年には1500万人以上の観光客が訪れました。家賃・物価高騰や環境悪化などの問題を受け、2024年7月6日には観光客反対デモが行われるなど、地域住民の間で観光客に対する反発が強まっています。

 スペイン領カナリア諸島のテネリフェ島でも、観光客の急増に対して何千人もの人々が抗議活動を行い、民泊用住宅やホテルの過剰な建設ラッシュを食い止めるため、一時的に観光客の受け入れを制限するよう求めました。建設ブームが現地の住宅費を押し上げ、地域住民の生活を圧迫しているためです。

 このようにオーバーツーリズムは、自然環境への影響、地元住民の生活環境悪化、観光地での事故やトラブルの増加など、さまざまな問題を引き起こしており、地域社会との共存を図るための対策が求められています。