観光客が特定の場所に集中することで生じる問題を解決するためには、観光客を適切に分散させる対策が必要です。そのための方法として、ITを活用したリアルタイムデータの収集と分析により、観光地の混雑状況を把握し、観光客に対して混雑を避けるための情報を提供することが考えられます。アプリでエリアの混雑状況や代替ルート、エリア周辺の観光スポットや隠れた名所の提案を行うこともできるでしょう。主要な観光地の混雑を緩和した上で、観光客がより多様な体験を享受できるようになります。
海外からの観光客に対しては、訪問前のプランニング段階で正確な情報を提供することが効果的です。観光客の多くは、ソーシャルメディアやウェブ上の情報からの影響を受けて行動します。富士山登山を例に考えると、登山ルートや気象に関する正しい情報や必要な装備について、観光客が情報を得る主要なソース(YouTubeやSNSなど)に、適切な内容を掲載することが大切です。これらのプラットフォームで誤った情報や危険な行動を促す動画などがバズった場合は、制作者に削除や注意喚起の追加を依頼するなどの対策も必要でしょう。
デジタルマーケティング手法の
活用による観光客の行動変容
オーバーツーリズム問題の原因の1つは、「予想外」の場所や時間に観光客が訪れること。これに対処するためにはデータ解析による予測と制御が重要です。予測には、IoTやセンサー、スマートシティ技術を活用したリアルデータの収集、ソーシャルメディアのデータ分析などが有効です。
ビッグデータとAIを活用して、観光客の行動パターンを分析すれば、観光地の管理やマーケティング戦略を最適化することも可能なはずです。混雑状況に応じたダイナミックプライシング(変動価格制)の導入やVIP席・エリアの設置などにより、観光客の行動変容を促すのもよいでしょう。
ソーシャルメディアは観光地に人が集中する大きな理由の1つにもなっています。先述した「富士山コンビニ」の写真がSNSで話題になり、観光客が殺到したのもその一例。そこでソーシャルメディア分析を観光分野にも応用することで、インフルエンサーの影響力や「聖地巡礼」など、観光客の動向をより正確に予測できる可能性があります。例えば、インスタグラムの投稿が急増している観光地には、近い将来、より多くの観光客が訪れる確率が高いと予測できます。