「印象派というのは聞いたことがあるけれどよくわからない」……そんなあなたにおすすめなのが、書籍『めちゃくちゃわかるよ!印象派』。本書は、西洋絵画の巨匠とその名作を紹介するYouTubeチャンネル『山田五郎 オトナの教養講座』にアップされた動画の中から、印象派とそれに連なる画家たちを紹介した回をまとめたもの。YouTube動画と同様に、山田五郎さんと見習いアシスタントとの面白い掛け合い形式で構成されています。楽しみながら、個々の画家の芸術と人生だけでなく、印象派が西洋絵画史の中で果たした役割まで知っていただけます。
今回から3回連続で「印象派の心の兄貴、破天荒すぎるクールベ先輩」をお届けします。

ヌードモデルがいるのになぜか風景を描く奇妙なアトリエ

社会の暗部も赤裸々に描く写実主義を貫き、叩かれまくっても炎上上等。生涯を通じて権威に媚びず、万博の向こうを張って史上初の個展を開催。官展に認められなければ自分たちで展覧会を開けばいいというクールベ先輩の教えがなければ、印象派展は開かれなかったかもしれません。

山田五郎(以下、五郎) 印象派の兄貴分というと、次に取り上げるマネが有名ですよね。マネは印象派の仲間たちの世話をしたり、いっしょに居酒屋で飲んだりしてくれた面倒見のいい先輩でした。でも実はもう1人、印象派には「心の兄貴」とでも言うべき人がいて、それがクールベなんですよ。そこで今回は、クールベ先輩の『画家のアトリエ』を取り上げたいと思います。

クールベ『画家のアトリエ』

アシスタント(以下、アシ) なんだか不思議な絵ですね。アトリエなのに、やたらいっぱい人がいるし、モデルさんが目の前にいるのに、なぜか描いているのは風景画だし。

五郎 でしょう(笑)。見れば見るほど、変な絵なんです。その理由はおいおい説明していくとして、そもそもクールベって画家の存在は知ってました?

アシ いや、知らなかったです。

五郎 ならば、この機会にぜひ知ってほしい。マネは面倒見のいい先輩だったけど、クールベ先輩はどこまでも我が道を突っ走った孤高の革命家だったんですよ!

アシ 革命家! 今回はすごいことになりそうですね(笑)。

五郎 この人は、1819年にスイスとの国境に近いオルナンという小さな村に生まれたのね。お父さんはそこの地主で、村長さんもやってたくらいの名家。お母さんは有名な美人。妹も美人。本人も若い頃はイケメンだった。

クールベ『パイプの男』

アシ たしかに、イケメンですね!

五郎 そういう家に生まれたから、法律の勉強をしろと親に言われて、「パリに行って法律学校に入ります」と偽って出てきたんだけど、本当は絵を描きたかったから画塾に入る。とはいえ、ほぼ独学だから、国の公式の展覧会サロンに応募しても落選が続いていた。その頃に描いた自画像で有名なのが次の作品。落ちたー! また落ちたー! というわけで、『絶望』って題がついた。

クールベ『絶望』

アシ ハハハハハ(笑)。