「超一流デザイナー起用の服」大量廃棄に涙する社員、セブン&アイ傘下の百貨店社員が労組委員長になる覚悟を決めたワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

2005年、老舗百貨店である、そごう、西武を運営するミレニアムリテイリングが、コンビニエンス事業を展開するセブン&アイに買収されることが決まった。労働組合の執行委員である寺岡泰博にも、寝耳に水だった。その後、彼は労働組合専従から職場復帰し、新たな事業展開をリードしていくことになるが……。※本稿は、そごう・西武労組トップとして陣頭に立った寺岡泰博『決断 そごう・西武61年目のストライキ』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

労働組合専従から職場復帰
勤務先は「別格」の池袋本店

 東京の労働組合勤務となった2005年のクリスマス、自宅で何気なくテレビを見ているとニュース速報が流れた。

〈コンビニ大手のセブン&アイとそごう、西武を運営するミレニアムリテイリングが経営統合することになりました……〉

 文字通り寝耳に水の一報で、大慌てで書記長に電話連絡した。ミレニアムリテイリングは当時、単独で株式上場を目指すとしていて、社員持ち株会もスタートしていたタイミングだったので、身売りは想像もしていなかったのだ。あとで聞くと、当時の委員長は内々に知らされていたようだ。

 親会社がセブン&アイに変わり、労働条件の調整も一段落ついて、私は2008年秋に職場復帰することになった。

 慣例では、1度中央執行委員を経験すれば「再登板」はまずないし、私自身、もう2度と労働組合に戻るつもりはなかった。中央執行委員勤めは雇用を守り会社を良くするという意味で責任が重く、重要なポジションだし、同じ人間が2度、3度と経験するよりできるだけ多くの人にその仕事を経験してもらいたいという思いが強かった。

 この当時は船橋に住んでいたため、労組を「卒業」したあとの勤務先は船橋店あたりかなどと想像していたが、内示されたのは池袋本店だった。