ヴィトンやエルメスを失ってしまう…セブン&アイに売られた名門百貨店の悲しき末路写真はイメージです Photo:PIXTA

大手デパート「そごう・西武」の旗艦店・西武池袋本店で大改装作業が進んでいる。セブン&アイ傘下だったそごう・西武の株式を2023年9月に買収した米投資運用会社・フォートレスは、西武池袋本店の不動産を3000億円でヨドバシカメラに売った。その結果、2025年夏のグランドオープン後は、売り場面積の半分弱をヨドバシカメラが占めるようになる。こうしたM&Aの意思決定プロセスにおいて、一貫して蚊帳の外に置かれていた従業員たちの不安と苦悩を、当時の労組トップが赤裸々に語った。※本稿は、寺岡泰博『決断 そごう・西武61年目のストライキ』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

労働組合の知らぬ間に
ニュースで自社の重要発表が

 NHKのニュース速報が流れた。

「セブン&アイの取締役会が、2023年2月1日を契約実行日とするフォートレスへのそごう・西武株式譲渡を決議」

 これから労組への説明というタイミングでまたもリークかーーこれで何度目だろう。つくづく溜め息が出た。

 報道によると、セブン&アイはフォートレスにそごう・西武の株式を譲渡する契約を締結することを2022年11月11日の臨時取締役会で決議し、フォートレスのビジネスパートナーとしてヨドバシホールディングスが加わるという。2023年2月1日の株式譲渡の完了(クロージング)まで、「今後の協議で詰めていく」とされていた。

 あとになって分かったことだが、売却後の池袋本店の大まかなフロアプランも11日の臨時取締役会で示されていた。それによると、西武池袋本店本館の北ゾーンにヨドバシカメラが入る計画だという。

 池袋本店は細長い廊下のような建物で、本館は北、中央、南の3ゾーンに分かれている。池袋駅は南より北側の人流が多く、北ゾーンがもっとも集客力がある。ルイ・ヴィトン、グッチなどのハイブランドも1階北ゾーンに入居している。

 フォートレスのプランでは、この北ゾーンからハイブランドを立ち退かせ、すべてヨドバシカメラにするというのである。