セブン&アイ・ホールディングスPhoto:Bloomberg/gettyimages

百貨店子会社そごう・西武を米フォートレス・インベストメント・グループに売却すると昨年11月に発表したセブン&アイ・ホールディングス。契約実行日は「3月中」だが、関係者の協議は混迷を深めている。特集『セブン解体 池袋動乱編』(全6回)の番外編では、その最大の原因である西武池袋本店の改装詳細案が判明。そごう・西武や地権者の反発は免れそうにないが、セブン&アイ内部では契約強行の“禁じ手”を使う案まで浮上しているもようだ。だが井阪隆一社長ら取締役4人は3月24日、物言う株主から退任要求を突き付けられた。“動乱”の炎が方々で燃え盛り、セブン&アイは窮地に追い込まれている。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

そごう・西武従業員ら即時抗告へ
物言う株主は井坂社長らに退任要求

 3月23日、セブン&アイ・ホールディングスの百貨店子会社そごう・西武の元従業員と従業員は、米フォートレス・インベストメント・グループへのそごう・西武売却の差し止めを求めた仮処分申請が東京地方裁判所に却下されたことを不服とし、東京高等裁判所に即時抗告する考えを明らかにした。

 元従業員らはセブン&アイの株主として、そごう・西武の譲渡価格が、西武池袋本店などの保有不動産の鑑定評価額と比べて不当に安価に設定されており、経済的な損害が生じる可能性があるなどと主張していた。株主側は今後、高裁の決定次第で株主代表訴訟の実施も検討するという。

 ただし、だ。仮処分の申し立て自体は「セブン&アイ有利」で事が進んでいるものの、セブン&アイも無傷ではない。

 実はセブン&アイは、そごう・西武の契約実行を「3月上旬に決定・発表しようと動いていた」(セブン&アイ関係者)。コンビニエンスストア「セブン-イレブン」のスピンオフ(分離・独立)を迫る物言う株主(アクティビスト)、米バリューアクト・キャピタルの圧力をかわす一助とする算段だったとみられる。それが、2月27日に仮処分が申し立てられたこともあり、3月上旬の契約実行を断念する羽目になってしまったのだ。

 そのバリューアクトは24日、セブン&アイに対し、井阪隆一社長、後藤克弘副社長、社外取締役の伊藤邦雄氏と米村敏朗氏の4人の再任反対を通知した。現経営陣の戦略失敗を問題視し、“No”を突き付けた形だ。

 そごう・西武の売却に関して言えば、当初2月1日だった譲渡契約の実行日を既に1度延期している。目下、「3月中」の完了を目指して各方面の関係者と交渉を続けているものの、事態は好転するどころかより混沌としてきている。

 中でも落としどころが見付からず、契約実行の最大のネックとなっているのが、そごう・西武の旗艦店である西武池袋本店の改装案だ。

 西武池袋本店は今後、フォートレスが「ビジネスパートナー」と称して手を組むヨドバシホールディングス(HD)傘下のヨドバシカメラが不動産を取得し、「最高立地」で独自にビジネスを展開する予定だ(『【スクープ】セブン&アイのそごう・西武「売却スキーム」判明!ヨドバシ入居の調整難航で株式譲渡延期か』参照)。

 だが、実際にヨドバシが店内のどこに入居するかでフォートレス-ヨドバシ連合とそごう・西武が大揉めし、仲裁すべきセブン&アイも右往左往している。

 というのもフォートレス-ヨドバシ連合がヨドバシの入居箇所について、セブン&アイやそごう・西武の当初の想定をはるかに超えた好立地・範囲を要求してきているからだ。

 次ページでは、新たに判明したフォートレス-ヨドバシ連合が提示する驚愕の改装案を明かす。セブン&アイでは事態を収拾させようと、“禁じ手”を使う案まで急浮上しているもようだ。