豊島区長の西武池袋「ヨドバシ出店反対」、家電量販店の“文化”論争が不毛なワケPhoto:PIXTA

西武池袋本店に対する
豊島区長の意見表明

 セブン&アイ・ホールディングスが、百貨店子会社「そごう西武」の売却先を、ファンドとヨドバシカメラの連合に決定した。報道によれば、西武池袋本店の低層階(1~4階)にヨドバシカメラが出店されるようだ。

 豊島区の高野之夫区長は、これに対し反対意見を表明した。区長の主張は、池袋ひいては豊島区における文化喪失への危惧だ。百貨店が街の顔でなくなり、富裕層が池袋から離れる。あるいは、長年築き上げてきた文化の街の土壌が喪失する、という趣旨だ。

 主要メディアやSNSの反応は、区長に手厳しい。批判の論点は2つに集約される。第一は、民間企業の経済活動に対する行政の意見表明は越権行為だという論点。第二は、「百貨店は文化なのに、家電量販店は文化ではないのか?」という論点だ。

「AERA dot.」などでの区長のインタビュー記事を読むと、彼の主張が時代錯誤な越権行為とは直ちには言えないと感じられる。そもそも区長は、ヨドバシの池袋出店に反対をしていない。文化の発信地たる西武百貨店の形を残してほしいというのが、本意のように読める。

 筆者も大学生だった1980年代半ばに池袋に住んでいた。警察官の叔父からは「池袋に住んで大丈夫?」と心配された。「汚い、怖い」というイメージだった池袋は、行政の努力とセゾングループの情報発信力で大きく変容した。筆者からすると隔世の感がある。

 区長発言に関する上記2つの論点について改めて考えてみよう。なお、下記の私論は、広く大型商業施設全般に関する論点整理という位置づけである。「そごう西武」売却の利害関係者に対する筆者の賛同・批判などでは全くないことをご承知いただきたい。