そこで、人間関係を基準に注意するのではなく、「正直なことは悪いことではない」ことを伝えたうえで、「仮に事実だとしても言われることで傷ついたり、悲しい思いをしたりしてしまう人もいる」ということを説明しましょう。きっと理解してもらえるはずです。

冗談や皮肉が通じない人
「普通わかるだろう」は通じない

 冗談や皮肉は、言葉の本来の意味とは異なる意味を含ませた表現です。定型発達の人は、これを理解することができますが、「自閉スペクトラム症(ASD)」の人は、相手に言われたことをそのまま言葉どおりの意味で受けとってしまう傾向があるので、冗談や皮肉が通じません。

 同じ理由で、慣用句や例え話、社交辞令、婉曲表現なども理解することができません。たとえば、一緒にお酒を飲みに行ったものの、あまり盛り上がらなかったとき、別れ際に「また飲みに行きましょう!」という挨拶をするのは、定型発達の人同士であれば、「ああ、社交辞令だな」と察することができます。しかし、自閉スペクトラム症の人は、言葉通りに受け止め「嫌なんだけど、どうしよう……」となってしまうのです。

 定型発達の人は、本音と建前を使い分け、ストレートな表現を避けることで人間関係を円滑に維持しています。しかし、発達障害の人は、常に本音で生きているので「なぜ、本心と違うことをわざわざ言うのか?」と疑問に感じてしまうのです。

 そこで、こうした特性を持つ人には、できるだけわかりやすく、言いたいことをストレートな表現で伝えることを心がけましょう。

「普通わかるだろう」や「察してくれるよね」というのは、発達障害の人には通じません。この“普通”は、定型発達の人にとっての普通なので、発達障害の人にとっての“普通”とは異なるのです。

文脈や行間を読みとることができない人
あいまいな表現は避けること!

 日本語の日常会話では、「あれ持ってきて」「ちょっと待って」など、あいまいな表現が非常に多く使われます。定型発達の人は、全体の話の流れや相手の表情や言い方、周囲の状況などから、そうしたあいまいな表現が何をさしているのか、何を意味しているのかを理解することができます。

 たとえば、「“あれ”はあの書類のことだな」とか「“ちょっと”なら3分くらいかな」といったように、いわゆる「文脈」や「行間」を読んで判断することができるわけです。