「失言が多い」「コミュニケーションがとりにくい」――。そんな特性を持つ部下に対して、上司はどう接するのが正解なのでしょうか?※本稿は、公認心理師の湯汲英史氏が監修した『図解 心と行動がよくわかる発達障害の話』(日本文芸社刊)の一部を抜粋・編集したものです。
誰彼構わず思ったことを言ってしまう人
悪気のない正直さが関係を壊す原因に
「部長の今日のネクタイ、似合いませんね」――身の回りにこのような感じで、誰彼構わず思ったことをストレートに言ってしまい、場を凍りつかせる人はいませんか?
これは、相手との関係性を考慮する、相手の感情を読みとることが苦手な「自閉スペクトラム症(ASD)」の人がやってしまいがちなことのひとつです。定型発達の人は、目上である会社の上司に、なぜそんな失礼なことを言うのかが理解できません。そのため、言われた本人も聞いていた人も「えっ!?……」と絶句してしまいます。
ところが、当の本人は「思ったことを正直に話しているだけ」ですので、部長をバカにしたり、おとしめたりといった悪気はまったくありませんし、失礼だとも思っていません。
「そんな失礼なことを言ってはダメだよ」と注意されると、むしろ「自分が見ている事実と正直な気持ちを伝えることの何が悪いのか?」となって混乱してしまいます。それが、自閉スペクトラム症の人の感覚で、「事実を指摘しているのになぜ問題になるのか?」その理由が理解できないのです。