散らかったデスク写真はイメージです Photo:PIXTA

発達障害の人たちの物事の受け止め方や感じ方、つまり「見ている世界」を理解し、コミュニケーション方法を変えることで、ともに生きることが少し楽になる。そんなテーマで送る第3回は、「片付けベタ」についてです。ADHD(注意欠如・多動症)の人は「注意散漫」や「衝動性」、ASD(自閉スペクトラム症)の人は「優先順位がつけられない」などの特性によって、デスクや部屋が散らかり放題になりがち。それぞれの特性に合わせた解決法を、解説します。(精神科医 岩瀬利郎)

※本記事は『発達障害の人が見ている世界』(岩瀬利郎著)から抜粋・再編集したものです。

「当たり前」が苦手な背景には、
努力ではどうにもならない理由がある

 定型発達の人が「当たり前」と思って平然とこなしていることでも、発達障害の人にとっては非常に困難なことがあります。

 たとえば、発達障害の人に遅刻が多いことはよく知られた事実です。

 これは多くの人が合併している睡眠障害に伴う朝寝坊や、注意散漫、そして準備の優先順位がわからなくなるなど、特有の性質に起因していることは間違いありません。

 お風呂に入れなかったり、電車、特に地下鉄に乗れなかったりするのは、ASD(自閉スペクトラム症)の人に見られることがある感覚過敏が原因かもしれません。

 このような「なんで?」と思ってしまうことの背景には、本人なりの理由、そして努力ではどうにもならない特性があることが少なくありません。

 今回のテーマである、部屋の中やデスクの上が片付けられず、物が散乱した状態になってしまうという現象も、そのひとつ。

 ADHD(注意欠如・多動症)の人は注意散漫や衝動性に原因を求めることができますし、ASDの人は優先順位をつけるのが苦手な特性が関係していることもあります。

 ここでは、そうした「片付けベタ」な人たちとの接し方や改善方法を紹介します。周りから見ると戸惑ってしまうようなこれらの諸問題は、ちょっとした工夫や働きかけによって、かなりの部分、解決できることもあるのです。

デスクも部屋も散らかり放題で、いつも探し物…片付けベタ
【23歳・ADHDの会社員の例】

 ADHDのJさん(23歳・女性)は片付けが苦手。デスク周りは物であふれ、毎日のように探し物をしています。ときどき注意され、突発的に片付けに目覚めるのですが、しばらくすると元通り。自宅の部屋も同じ状態だと言います。

 このような片付けベタは、ADHDの人に非常によく見られる特性です。注意散漫なため、出したものをほったらかして別のものに気を取られてしまったり、つい資料や雑誌を読みふけってしまったり。空間認識能力が弱く、スペースを有効活用できなかったりすることもあります。また、ASDの特性も併発している場合は、優先順位をつけるのが苦手なため、不要なものでも捨てられず、ため込んでしまうことがあります。

 さらに、衝動性から興味のあるものを次々に買い込んでしまいます。いきおい、乱雑さは増すばかり。

「よく平気だね」と周りは思ってしまいますが、本人もそれを心地よいとは思っていません。気が散りやすいADHDの人にとっては、整頓された空間のほうが本来は居心地がいいはずなのです。

 実際にJさん自身も、私にこんなことを話してくれました。

「私の部屋を見た人はたいてい、『片付けたほうがいいよ』と言うけど、私もこれでいいと思っているわけじゃありません。いつも『今日こそは』と思って片付けはじめるんだけど、なぜかどうしても、部屋がきれいにならない! 理由がわからなくて、『誰か助けて!』という感じです…」