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発達障害の人は、今でも「ちょっと変わった人」「空気の読めない人」などと簡単に決めつけられてしまうことが少なくありません。しかし、発達障害とは、一言で言えば“脳機能の特性”。発達障害の人と定型発達の人とでは、物事の受け止め方や感じ方、つまり「見ている世界」がかなり異なることがあるのです。まずは本人たちの「見ている世界の違い」を理解しましょう。理解し、コミュニケーション方法を変えることで、共に生きることが少し楽になるはずです。(精神科医 岩瀬利郎)
※本記事は『発達障害の人が見ている世界』(岩瀬利郎著)から抜粋・再編集したものです。
悪気はないのに、なぜか人を怒らせてしまう
自分なりの強固な世界観を持っていて、相手の気持ちを想像する力が乏しかったり、相手の言葉を字義通り受け止めがちなASD(自閉スペクトラム症)の人。
多動傾向があるため、人の話を黙って聞いていられなかったり、注意力散漫で約束をすっぽかしたりすることがあるADHD(注意欠如・多動症)の人。
ASD・ADHDといった発達障害の人は、相手との関係性や反応を読むのが苦手なことが多く、周囲の人が「エッ」と驚くようなその場にそぐわないことを口に出すこともあります。簡単に言えば、「空気を読む」ことが非常に苦手。
そんな本人たちの言動の「なんで?」が理解できれば、イライラせずに受け止めることができるはずです。
ここでは、不用意な一言で相手を怒らせたり、周囲を凍りつかせたりしてしまう人の例を紹介します。
もし、あなたの周りにこの事例に当てはまるような人がいれば、ぜひ、参考にしてみてください。
そうすれば、あなたと本人が抱えている悩み事が減り、共に生きるのが少し楽になるはずです。
職場で「どうしてそれを言っちゃうの?」と思われがちな人が見えている世界【28歳・ASDの会社員の例】
会社の部内飲み会に参加したTさん(28歳・男性)。翌日の朝、みんなの前でいきなり部長にこう言い放ちました。「昨日の飲み会、部長の自慢話長かったですね!いや~、みんな引いてましたよ」。
本人はまったく悪気はないようですが、部内に一瞬、緊張が走ります。後で同僚から、「相手は部長だぞ。もう少し空気読めよ」と言われ、困惑したとのこと。
周りに遠慮することなく、いつも事実を口にするTさんは、ASDです。ASDの人は人と会話をするとき、“自分が見ている事実そのもの”を重視し、人間関係などには無頓着なことがあります。相手や周りの人の表情や声の調子、しぐさといった反応を読むことも苦手です。上下関係で発言を変えたりはせず、愛想やお世辞も使わないので、どうしても“空気が読めない人”と思われがちなのです。
そのため、たとえば会議の終わり際、みんなが片付けを始めていても一人で話し続けたりして、やっぱり“空気が読めない人”と思われてしまうこともあります。
今回の例でもTさんは「だって本当に長かったよね?」と悪びれません。
「事実を言って何がいけないのか、さっぱりわからない」というTさんの意見をまとめると、次のようになります。
「飲み会で部長の自慢話が本当に長くて、みんなも困っていた。僕はいつも事実を口にしているだけなのに、どうしてみんなから『空気読め』なんて言われるのだろう。それに、もし僕が同じことを言われても、事実だから腹を立てないと思うけれど」
この「見ている世界の違い」による捉え方の落差が、本人と周りの人たちともに、やりづらさを生み出す原因となってしまうのです。









