ロレックスらの「トランプ詣で」に参加拒否した
意外な時計メーカーとは?
ただ、もちろん大きな代償が必要だった。スイス政府の発表によると、スイス企業が2028年末までに、2000億ドル相当を米国に直接投資することが決まった。さらに、スイスが米国から輸入した牛肉500トン、バイソン肉1000トン、鶏肉1500トンを「無税」とする関税割当枠が設けられたという。
この関税引き下げで、スイスの時計ブランドや部品メーカーなどの社員はホッとしているに違いない。というのも、先述したラグジュアリーブームの収束なども影響し、中堅以下の時計ブランドや部品メーカーの中には、スタッフの自宅待機や一時解雇を余儀なくされる企業があった。今回はひとまず、雇用環境がさらに悪化するという最悪の事態は防げたとみられる。
なお、今回のトランプ大統領とスイスのVIPとの会議については、ひとつ興味深い話がある。スイス時計産業のVIPのひとりが、この会議に参加しなかったのだ。スウォッチ グループのニック・ハイエックCEOである。スウォッチ グループはリシュモンやLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)と同等の、十数ブランドを傘下に抱えるスイス最大の時計コングロマリットだ。
ハイエックCEOはスイスの新聞に「私がご機嫌を伺わなければいけない“王様”は顧客だけだ」「私たちは(トランプ大統領にとって)ウイリアム・テルなのか?それとも家来なのか?」と語り、トランプに詣でたVIPたちの弱腰を揶揄した。この発言は、トランプ大統領を本気で「アメリカの王」、ひいては「世界の支配者」にしようという、熱狂的な支持者たちへの批判も込められているようだ。
ちなみにスウォッチは、引き下げ前の「39%の高関税」を揶揄し、文字盤の「3」と「9」の位置を逆にしたモデルを売り出すなど、独自路線でトランプ大統領の方針に警鐘を鳴らしてきた。
文字盤の「3」と「9」の位置が逆になっているモデル 出典:Swatch公式サイト拡大画像表示







