日本のいわゆる識者たちが、日本のメーカーが円高に苦しんでいる時に「外国製品が安く入ってくる」として少なからず国民レベルではよいことだとしていたのも同じ理屈です。説得力を上げるため、日本のコメは外国の何倍も高いとよく言われていたのをご記憶の方も多いでしょう。

 話を戻します。資本家たちは、パンが安くなると言って労働者を味方にし、地主たちに対抗しました。ジャガイモ飢饉が発生し食料供給が悪化したこともあったのでしょう。1845年穀物法は廃止されます。

 穀物法廃止に見られるように、自由貿易は、基本的に強者の論理で進められます。特に産業革命によって「世界の工場」と呼ばれるようになったイギリスは世界一の強者でした。

自由貿易論者と
反自由貿易論者の論争

 水力紡績機が発明され、大量生産が可能になったイギリスで作られた綿製品(コットン)は、綿の大産地であった植民地インドにも強制的に輸出されたため、インドの綿産業は大打撃を受けました。インド独立の父、マハトマ・ガンジーが糸車を回す写真が有名なのは、そうした強者の論理に抵抗する姿を象徴するからです。