もし仮にポルトガルが毛織物をつくるのをやめて90人いる労働者を全てぶどう酒作りに投入したとすると、ぶどう酒の生産量は80人から170人に増えるので2.125倍のぶどう酒が作れます。そしてイギリスがぶどう酒を造るのをやめて毛織物に全労働者を投入すると、100人が220人になるので2.2倍の生産ができることになります。

図表:イギリスとポルトガルの比較同書より 拡大画像表示

 ポルトガルとイギリスが別々にぶどう酒や毛織物を作っていたら両国ともぶどう酒1単位、毛織物1単位しか作れませんでした。

 しかし、こうやって仕事を分担すると、両国は今の労働力で2倍以上の生産物を得られるのです。そしてポルトガルはイギリスにぶどう酒を輸出し、イギリスはボルトガルに毛織物を輸出すればお互い儲かり、めでたしめでたしとなるという理屈です。

強者の論理で
進む自由貿易

 こうして国際的に仕事を分担すると、お互いにメリットがあるから貿易を自由化しましょうというのが、自由貿易の根底に流れている考え方です。