月に数百万円を稼ぎ、数億円の資産を持つ。そう聞くと、「これは成功者だな」と思ってしまう。しかし、実はこのレベルであれば、並外れた才能の持ち主でなくても、やり方次第で到達できるという。そんな人々のことを「スーパーノーマル」と呼び、彼らの仲間入りを果たす方法を教えてくれる人がいる。月給約16万円のサラリーマンから、183万人の登録者数を誇るYouTuberへ華麗なる転身を果たし、スマートストア(ECサイト)を運営する経営者でもあるチュ・オンギュ氏だ。彼は、「成功につながる賢い努力をするには、運と実力を正しく区別することが不可欠」と語る。本記事では、その理由をチュ・オンギュ氏の著書『SUPER NORMAL 凡人が上位1%の「成功者」になる抜け道』を元に解説する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

SUPER NORMALPhoto: Adobe Stock

成功の秘訣は「突然変異」を見つけること

 チュ・オンギュ氏は、2008年に財テク・自己啓発YouTubeチャンネル「申師任堂」を開設し、180万人の登録者を獲得。そのチャンネルを約20億ウォン(約2億円)で売却したという経歴を持つ。

 この話を聞くと、あなたはチュ・オンギュ氏のことを「かなり特別な才能を持った人なのだろう」と思うに違いない。

 しかし、彼は、元々は月収約16万円のサラリーマンだった。

 特別な才能があったわけではないと本人は語っている。

 さらに、チュ・オンギュ氏によると「1ヵ月に数千万ウォン(約数百万円)を稼ぎ、数十億ウォン(約数億円)の資産を持つ人は、地下鉄の1車両か2車両に1人はいる。彼らは生まれつき裕福でなくても、並外れた天才でもない」というではないか。

 チュ・オンギュ氏は、彼らを「スーパーノーマル」と呼ぶ。

 その「スーパーノーマル」の中でも、「自分と同じような実力の人で、圧倒的な成功を収めた人(突然変異)」を見つけ出し、「その人の行っていることを分析し、真似ることで成功のヒントを得ることができる」というのが、チュ・オンギュ氏の持論だ。

「運」と「実力」を正しく区別し、努力する

 しかし、単純に突然変異の行動を真似しても、毎回いい結果が出せるとは限らない。

 チュ・オンギュ氏は、その理由として「あらゆることの成否は、『運』と『実力』の組み合わせによって決まるからだ」と指摘する。

 大事なのは、「運」と「実力」を正しく区別して、効率的に努力していくことだという。

「運の領域」と「実力の領域」をごちゃまぜにしてしまっている人の例を挙げてみよう。
平凡な人たちが集まって、ロトの勉強会を開いている。彼らは「ロトの1等の当選番号には法則がある」と信じ、お金と時間をかけて研究する。
ロトについて研究すれば、本当に1等を当てられるのだろうか?(中略)
不可能だ。ロトが当たるかどうかは、ほぼ100%運にかかっているからだ。
はっきり言って彼らは無駄金を使い、時間を浪費しているだけである。(P.144-145)

 この例を聞くと、「そんな愚かなことを」と笑ってしまうかもしれない。

 しかし、意外と「運」と「実力」を区別できておらず、「運の領域」に過ぎないことを求められることは、日常的にある、とチュ・オンギュ氏は語る。

「運の領域」を押し付けてくる会社に注意

 会社で働いていると、運と実力の領域をごっちゃにして、無理難題を押し付けてくる上司がいる。

 例えば、突然部下に「我が社の公式YouTubeは、まだ1000人しかチャンネル登録者がいないな。今年中に100万人に増やしてくれ」などと言ってくる人だ。

 しかし、この会社にYouTubeの登録者数を短期間で激増させるノウハウや、マニュアルがあるわけでなければ、経験と実力が圧倒的に足りない。

 であれば、登録者数を増やせるかどうかはほぼ運任せ、ということになる。

 酷い話ではあるが、「企業内では、こうした形の意思決定がしばしば起こる」とチュ・オンギュ氏は述べる。

こんな形の目標設定は、次のような無茶な命令と大して変わらない。
「キム係長、宝くじを当てる方法を研究してみてくれ」
具体的な戦略もないのに、むやみに高い目標を設定するのは、全面的に「運」に頼るようなものだ。こんな会社で働いていても成長は見込めないから、早めに退職したほうがいい。(P.156)

 チュ・オンギュ氏は、「大事なのは、どんなプロジェクトであっても、プロセスを『運』と『実力』に分解すること。そうすることで、事業を成功させるための糸口が見えてくる」と提言する。

「運の領域」と「実力の領域」の見分け方

 YouTubeの運営作業を例に、プロセスを整理すると次のようになる。

テーマ選び→タイトル決め→サムネイルのデザイン→台本作成→撮影→編集→動画のアップロード→チャンネルの成長(P.159)

 このプロセスを「運」と「実力」に分ける場合、どのように見分けるか。

 チュ・オンギュ氏は「わざとクオリティーを下げることができるものが実力の領域のもの」だと語る。

 例えば、わざと台本を適当に書くことはできる。だから、これは「実力」の領域だ。撮影や編集も同じだ。

 しかし、社会の大きな関心を集めるテーマを意図的に生み出すことは難しいので、テーマ選びは運と実力の領域が混在していることになる。

 そのため、先ほどのプロセスを運と実力に分けると以下のようになる。

 テーマ選び(運・実力)→タイトル決め(運・実力)→サムネイルのデザイン(運・実力)→台本作成(実力)→撮影(実力)→編集(実力)→動画のアップロード(実力)→チャンネルの成長(運・実力)

 このようにして分解を終えたら、次に「YouTube事業」を成功させる方法を考える。

 その際にまずすることは「実力を高めること」とチュ・オンギュ氏は指摘する。

何かを成功させたいとき、実力が必要な領域では実力を上げればいい。
しかし、運の領域において実力を高めようと努力しても、ほとんど意味がないということを忘れないでほしい。(中略)
限られたリソースを間違った部分に使い果たしてしまうと、本当に使うべきところに使えなくなる、という悲劇が起こる。運の領域を鍛えようとするのは、お金や時間の無駄遣いに過ぎない。(P.163-164)

「運」に時間と労力をかけてはいないか

 チュ・オンギュ氏が言うように、確かに自分の努力ではどうにもならないことに時間と労力をかけても、成果は出ないであろう。

 もし、あなたが日々かなりの努力をしているにもかかわらず、いい結果が出ていないなら、運の領域にリソースをかけている可能性がある。

 ぜひ一度、自分のプロジェクトを「運」と「実力」に分けてみてほしい。

 実力の領域に注力することで、きっと大きな変化が生まれるはずだ。