なぜギャラがわかるかというと、社員時代、私も仕事を彼女にお願いしていたからである。うちの雑誌でお支払いするのはこれくらい。あの先輩は、ひと月にほかで6誌も7誌も書いている。下世話だが、おおよその見当はついた。

 彼女のように「スーパープレイヤー」と社員が陰で呼ぶ、年収1000万は超すであろう売れっ子ライターが、周囲に何人もいた。その後、資金を元手に渡仏しワインを勉強、ソムリエになった人もいれば、中医学を学び、薬膳師として活躍する人も。

 女性の多いその編プロに出入りする人たちは、26歳で出版の世界に入った私には、まさに生き方の教科書だ。女性のフリーライターのロールモデルがあまりいない頃から、独自に道を拓いた先駆者ばかりだった。

 以来、確定申告で各社の支払調書をみるたびに、くだんの先輩の言葉を思い出した。

 初年度は10対0。翌年9対1。次は8対2。はっきりと、おもしろいようにわかる。比率が停滞する年もある。

 この割合の指標がつねに心にあると、仕事をいただく際に、受けるかどうか判断ができる。