「40~50歳代」の消費はコロナ禍前より1割少ない、賃金抑制に教育・介護の将来不安で節約志向Photo:SOPA Images/gettyimages

実質個人消費5四半期ぶりプラスでも
4割占める中高年世帯の消費低迷させる「三つの壁」

 9月9日に公表された4~6月期GDP統計(2次速報)で、実質GDPは前期比0.7%増(年率2.9%増)と2四半期ぶりに増加に転じ、4四半期連続で前期比マイナスだった実質個人消費も前期比0.9%増とプラスに転じた。だが、消費回復の基調がしっかりしたものになったとはまだいえない。

 景気の足かせとなっている消費意欲の弱さは全世代に及んでいるが、なかでも中高年層(40~50歳代)でその傾向が強い。世帯主の年齢が40~50歳代の世帯では、実質個人消費はコロナ禍前(2017~19年平均)の水準を1割弱下回っており、若年層(30歳代以下)や高齢層(60歳代以上)に比べて回復力が弱い(図表1)。

 この傾向は中長期的に見ても同様だ。世帯主年齢が40~50歳代の世帯の実質個人消費は1990年の水準を2割以上下回っており、その減少幅は若年層や高齢層を上回る。

 春闘で高い賃上げが実現したことや夏のボーナスが増加したことから、実質賃金は7月も、27か月ぶりに前年比プラスに転じた6月に続いて前年上回った。今後も賃金の上昇が続いて個人消費が回復し、日本銀行が目標とする2%物価上昇が定着する場合、政策金利は2%前後まで引き上げられるとの見方が多い。

 だが、こうした「賃金・物価の好循環」や「金利ある世界」が実現したとしても、全体の約4割を占める中高年世帯の消費はこれまでと同様に抑えられる可能性がある。消費の本格回復には、中高年世代が抱える将来不安の高まりなど「三つの壁」の解消が鍵だ。将来不安は主に若者層の問題として語られることが多かったが、いまや中高年層が抱える大きな問題だ。