一度でも失敗すると失敗が怖くて次の一歩が踏み出せない。そんな人も多いのではないだろうか。「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回お話を伺ったのは、芸人を起用した企業のPR動画制作サービス「芸人インターン」などを手掛ける、(株)フラワーズロマンス代表の中道正彦氏だ。中道氏は、森社長と同じく“芸人出身”。そんな中道氏は、『スタートアップ芸人』をどう読み解いたのか。初回のインタビューでは、33歳で芸人を引退してから、社会人経験ナシで起業するに至った経緯を伺った。(ダイヤモンド社書籍編集局)
人気番組に出演するもブレイクせず……
――元芸人で、現在は社長という共通点からインタビューを依頼させていただきました。森社長とはお知り合いだったのですか?
中道正彦(以下、中道):いえ、芸人時代を含めて面識はないんです。ただ、「芸人から経営者になってバリバリ稼いでいる、すごい人がいらっしゃるなぁ」とは思っていました。
――そもそも中道さんが芸人を引退した理由は何だったのですか?
中道:彼女との間に子どもを授かって結婚したので、家族を養うためにも、引退して別の道に進まなければと思ったんです。つまり引退の理由を端的に言えば、結婚したことと、芸人のままでは家族を養う金がなかった(売れなかった)からですね。
僕は20歳の頃から12年間芸人をやっていまして、最終的に「フラワーズオブロマンス」というコンビで6年程活動していました。そのコンビで『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)の特番「おもしろ荘」に出させていただいたんですけど、全然売れなくて。
――無名だけど面白いお笑い芸人にスポットを当てる番組ですよね。出演後に大ブレイクした芸人さんは多いですが……。
中道:僕たちの場合は、ブレイクのきっかけにはなりませんでした。
本書の第1章に登場する「野性爆弾に30対0! 真っ赤に染まった観客席の衝撃」で書かれた“芸人としての絶望”は、僕もほぼ同じ体験をしているので、めちゃくちゃ共感できましたね。自分が大好きなことで、いちばん自信があることで評価されないと思い知らされる。あれは絶望以外の何物でもないです。
ただ、森社長は「潔く芸人を引退した」と書かれていますが、僕の場合はもう少し複雑な感情が交錯していまして。それには、かまいたち・濱家さんと、霜降り明星・粗品くんが関係しています。
僕は吉本総合芸能学院(NSC)大阪27期を卒業していて、1期上のかまいたち・濱家さんはいちばんお世話になった先輩です。当時から濱家さんの言動を間近で見ていたわけですが、濱家さんはお笑いに対する姿勢がとんでもないんです。
そして、霜降り明星とは同じライブに立ってきたんですが、粗品は24時間お笑いのことを考えている人間なんですね。
じゃあ、僕が濱家さんや粗品のようにやれるかって言ったら、やれないなと。そういう芸人としての生き方やマインドが、自分とは決定的に違う――そう痛感したことも、芸人を引退するに至った大きな動機でした。
33歳・社会人経験ゼロで目指した経営者への道
――では、引退からどういう流れで起業することになったのでしょうか。
中道:引退したのは2016年5月、33歳の時です。
33歳にして社会人経験ゼロという状態なので、勤め人は無理だろうと思い込み、自分が経営者になるしかないと考えたんです。ちなみに、名刺の渡し方すら知らない状態でした。
そこで、堀江貴文さんのオンラインサロンなど、経営者のコミュニティに入って勉強するうちに、出会った仲間から「一緒に飲食店をやらないか」と声をかけてもらいまして。その人が出資者、僕がプレイヤーという形で店長を任されました。もちろん未経験だったのですが、1年後にはその店を黒字化できたんです。
芸人引退から2年後には、芸人を起用した企業のPR動画制作サービス「芸人インターン」などを展開する、株式会社フラワーズロマンスを立ち上げました。
――苦労するかと思いきや、順風満帆だったのですね!? そのあたりのことは、また改めてお聞かせいただくとして。もし今、当時の中道さんのように挫折感の真っ只中にいる人がいたら、どんな声をかけますか?
中道:今回いちばん言いたかったことは、「たいていのことは、意外となんとかなるよ」ということ。大きな挫折や失敗、屈辱を味わうと、「人生、終わった」と悲観する人もいますよね。だけど、僕を見てください。33歳で資格も社会人経験もないまま突っ走ったのに、なんとかなりましたから。
これは森社長も同じだった思いますが、挫折はしちゃった以上しょうがない。でも、今後の人生を考えた時、乗り越えたほうがいいに決まってます。だったら次なる目標を定めて、成功させる方法を考えてチャレンジするのみですよね。それでダメなら、また次の一手を考えればいい。
ただし、僕も自分だけの力ではなく、仲間や家族に助けられて今があります。次回以降、本書のテーマである“仲間力”の話などもしていきたいと思います。