軍隊が戦争をするためには、海を渡って外国に重装備の部隊を送る必要があります。それには揚陸強襲艦が必要です。空母のように飛行甲板を持ち、大砲などの重武装を大型ヘリで運ぶとともに、船首部が大きく開口し、そこから戦車や装甲車が武装した歩兵を載せて浜辺にそのまま乗り上げられる、上陸用舟艇を多数格納できるような船がなければ、上陸作戦はできません。当然、その間に空軍と海軍による空海戦が行われます。つまり、港の埠頭に悠長に船を横付けして、何トンもある戦車をクレーンで吊り下げて上陸することは不可能なのです。

 しかし、中国が保有している揚陸強襲艦はたった一隻(小型を除く)。その船で運べる兵隊は1600人にすぎません。この事実一つをとっても、中国の軍事力では台湾も攻められないことを知るべきです。ここに至るまで、やりたい放題の中国政府の反日政策が今回の問題を引き起こしたことを明らかにし、外国人の駐在は危険であるというプロパガンダを、日本は行ってもいいはずです。

 中国はや反日政策により、土地・住宅政策の大失敗と経済的不況の不満を日本や外国資本への批判でごまかそうとしてきました。しかし、日本のプロパガンダが浸透すれば、外国資本は中国への進出に慎重になるでしょう。ただでさえ現地では、法律や条約が順守されづらいことが定説になっています。

中国の「反日」扇動は
いずれ自らの首を絞める

 それにしても、この程度の国際条約も守れず、「このような案件はいかなる国でも発生する」と堂々と居直る中国には、疑問を感じざるを得ません。国内ニュースでは、地元メディアだけが「通行人の未成年(苗字のみ、年齢には言及せず)が刃物で負傷させられた。被疑者を拘束した」と、一般国民にはまったく事実関係がわからない報道をしています。そして日本政府に対しては、「犯人は定職につかず、公共の施設を破壊した前歴が2回ある」とだけ発表しているのです。こんなことを許していいのでしょうか。

 このような状況では、今後も中国で日本人攻撃が止むことはないでしょう。中国政府による外国人へのヘイト煽動は、世界各国の反発を受け、不況をさらに長引かせ、格差を広げ、テロの横行を許すことになりかねないということを習近平主席に自覚させ、国の方針を改めさせるよう努力すべきです。

 おそらく中国は、この事件をうやむやにし、日本の海洋汚染水問題などを持ち出し、輸入許可を遅らせるといった圧力によって乗り切ろうとするでしょう。その場合は、日本も国内に大量にいる中国人犯罪者への追及や逮捕を厳しく行うなどして、対抗すべきでしょう。徹底的に対抗することが中国のためでもあることを、国全体で主張していくべきです。

 かつて日本も中国も韓国も、欧米列強の侵略に苦しんでいた国です。そのくびきから逃れた今こそ、三国が連携すれば「アジアの世紀」を実現できるはずなのに、お互いにいつまでもいがみ合っている現状は、残念としか言いようがありません。

(元週刊文春・月刊文藝春秋編集長 木俣正剛)