意外と触れられていない
中国の態度が国際条約違反である理由

 また、外務省幹部はこんな提案をしています。

「この事件では、はっきり『国際条約違反』 であると中国を非難すべきだと考えます。日本の政治家やメディアは触れていませんが、日本と中国には犯罪捜査の協力体制について、基本的な条約が2007年に結ばれています」

 その条約名は「刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国との間の条約」(日・中刑事共助条約)。両国外相の名前が署名された、正式な条約です。条約文は長いので要約すると、次の3点が柱となっています。

(1)捜査協力、事件の捜査において、日本と協力し、必要な情報や証拠を提供する。

(2)訴追協力、犯人の訴追に関して、日本と連携し、適切な法的手続きを進める。

(3)情報交換、事件に関する情報を迅速かつ正確に日本に提供する。

 平成以降、日本で中国人による犯罪が多発し、日本人の対中感情が厳しくなっていることを背景に、この条約は結ばれました。今回の事件では、まず(3)の情報交換がまったく機能していません。事件に関する情報が迅速かつ正確に日本側に提供されていないのです。日本側はこの条約を楯に、「国際条約違反」であることを明確に主張し、期限を切って詳細かつ正確な情報を日本政府に伝えるように申し入れるべきです。

 それが反日による犯行であれば、(1)捜査協力条項に準じて「日本の警察も犯人の取り調べをさせよ」と要求すべきですし、(2)訴追協力条項で、量刑の判断についても日本人が納得できるよう公開すべきだと主張してもいいでしょう。

 私もこの外務省幹部の提案に賛成です。この条約に罰則はありませんが、国際条約違反なのだから、沈黙せず、宣伝すべきなのです。日本は国連やG7など、さまざまな国際機関を通じて中国の国際法違反を宣伝し、国内でヘイトを連発して日本人へのテロ行為を生んでいることを非難すべきです。このままでは、中国人の外国人に対するテロが日本人だけにとどまらない可能性を主張すべきです。それで各国の中国との経済協力や、海外企業の中国への投資・進出において懐疑的な雰囲気を醸成させることができれば、中国をけん制することができます。

 また、国際条約である以上、違反した場合には国際司法裁判所に訴えることもできます。単なる情緒的なコメントではなく、二重三重に、中国に対して法に準拠した批判的な行動を起こすことを予告すれば、彼らは政府内でも真摯な対応策を考えざるをえなくなるはずです。