あのゆりやん、唐田、剛力が……
役者の本気が醸し出す「滅びの美学」

 本作は制作過程からたびたびニュースとなり、剛力彩芽(ライオネス飛鳥役)や唐田えりか(長与千草役)がレスラーを演じることや、ゆりやんレトリィバァを含め役者たちが体重を増やしたことなどが、その都度話題を呼んだ。

 唐田えりかは不倫問題が大きく報道され、剛力彩芽は数年前に所属事務所だったオスカーを退社している。起死回生、一念発起を感じさせるキャスティングがあざといようにも感じられ、視聴する前は懐疑的な気持ちもあった。

 しかし視聴した後に感じるのは、剛力彩芽の圧倒的なポテンシャルと、唐田えりかの役者という仕事にかける真剣さだった。2人ともそれぞれこれまでに実績がある役者であり、評価もされてきたが、それでもこれまでが過小評価だったのかもしれない、と思うほどだ。増量したとはいえ、実際のクラッシュギャルズと比べると体の線が細いのは否めないが、それを演技で充分にカバーしている。

 ゆりやんについては、迫力不足という指摘もあるが、彼女だからこそ演じられるダンプ松本の「素顔」があったと感じる。

 今でこそ、ダンプ松本が本当は優しい気立ての持ち主であることは知られているが、当時はヒール役に徹していたし、ドラマの中でも描かれているように、実家への嫌がらせがあるほど見る人はその虚像を信じ込んでいた。

 令和の時代になっても、人々はアイドルの演じるストーリーを楽しんでいる。滅びの美学ではないが、刹那的なきらめきにどうしようもなく惹かれるのは人間のサガなのかもしれない。