遠藤がサポートしているのは介護施設にいる兄をもつ、小林良子(仮名・61歳)だ。この日は、川崎駅前の喫茶店で待ち合わせた。
良子は、20年以上会っていない兄から、突然、駅前で倒れたという連絡があって、慌てふためいたという。
遠藤は、特に気を遣う様子もなく、単刀直入に切り出す。
「それでお兄さんが亡くなった後のことなんですけど、小林さんの希望は散骨ということですよね」
「そうねぇ。骨が残っても困るから、海洋散骨がいいんじゃないかと思って」
「散骨は業者がやってくれるんですよ。場所はどこにしましょうか」
「東京湾ですかね」
もう一度書いておくが、これは死後の話ではない。良子の兄は一度倒れて初期の認知症ではあるものの、病院から介護施設に移ると驚異的な回復力を見せて、ピンピンして生活している。
20年ぶりの再会が悪夢の始まり
血縁者なら世話をすべきなのか?
しかし、妹の良子と遠藤はそんなことなどお構いなしに納骨の話まで、ざっくばらんに打ち合わせを進めている。その表情には安堵の笑みさえ浮かんでいる。
話はどんどん進んでいき、結局兄の死後は、管理のわずらわしくない海洋散骨を選択することになった。