「遠藤さんとお会いしたときに、死んだ後のことまでしてくださるって言ってくれて安心したんですよ。私たち兄妹だっていつ死ぬかわからないのに、兄だけずっと生き続けたら、どうしようって思ってたんです。

 遠藤さんは、私たちがみんな亡くなっても、兄のことをお骨にするところまではしてくださるっておっしゃるから。それだけでもう、何の迷いもなく遠藤さんにお願いすることに決めたんです。遠藤さんにはこうやって、細々とお世話いただいているんですよ」

 良子は遠藤に心から感謝しているようだった。

 良子は20年ぶりに会う兄が、誰だかわからなかった。10歳も年が離れていて、良子が中学生になったときには自衛隊に入隊して家を離れていたため、ほとんど話したこともない。

 アレルギー持ちで、幼少期には病弱だった良子は自分の病気のことで精いっぱいでもあり、家にいたときの記憶もなかった。

 特に愛情も憎しみもなく、最近まで、どこに住んでいたかも何をやっているかもわからなかった。ただ血縁というだけでそんな兄の世話を押しつけられるという事実に、一気に血の気が引いた。