書影『1985年のクラッシュ・ギャルズ』(光文社未来ライブラリー)『1985年のクラッシュ・ギャルズ』(光文社未来ライブラリー)
柳澤健 著

 2010年に亡くなった炯眼(けいがん)の劇作家が芝居の台詞として書いた言葉は、元プロレスラーの心を強く打った。

 1991年11月に渋谷のパルコ劇場で上演された「リング・リング・リング」は劇場始まって以来の入場者数を記録する大ヒットとなり、93年5月には工藤栄一監督によって映画化された。プロレスシーンの撮影は全日本女子プロレスの全面協力を得て公開で行われ、主役として4年ぶりにリングに上がった長与千種は多くのファンからの声援を浴びた。

 まだ動ける。まだやれる。そう実感した28歳の千種は、女子プロレスを変えるのは自分しかいないという決意と覚悟を胸に、現役復帰に向けて動き始めた。