根気強くひとつのことを考えられない、寝ても疲れが取れない、よく目が霞む、歩くのが遅くなった……。「老い」は気付かぬうちに少しずつあなたを蝕んでいく。老いを少しでも遅くしたいと願わない人などいないだろう。そこで、食事術や生活習慣といった「不老術」をアメリカの名医がまとめた本が誕生、NYタイムズベストセラーに選ばれ、エリック・シュミットといった数多くの著名人から絶賛を受けている。世界9カ国以上で刊行の話題作『医者が教える最強の不老術』より、内容の一部を特別公開する。
「現代の食生活」が循環系とリンパ系の機能を阻害している
循環系とリンパ系からなる輸送システムは、組織由来の代謝廃棄物を取り除いたあと、肝臓と腎臓に浄化させるために血液とリンパ液を心臓に戻す。血管とリンパ液の流れの機能障害を引き起こし、心臓病を促進するものは何だろう?
もうおわかりだろう。工業化され、加工され、デンプンと糖と高度に精製された脂肪に満ちた、炎症を引き起こす現代の食生活だ。それは保護的な薬効のある食べ物に乏しい。ファストフードを1回食べただけでも、血管にダメージが及ぶ(*1)。
だが、その悪影響の多くは、植物性栄養素(*2)や抗酸化物質(*3)を摂取することで相殺可能だ。そもそも、植物性栄養素を豊富に含む栄養価の高い自然食品を食べていれば、血管に対するダメージは未然に防ぐことができる(*4)。
血管の健康に重要なもう1つの食品は、一酸化窒素を増加させる食品だ。一酸化窒素は血流を増やすからだ。体内で一酸化窒素を生成するには、アミノ酸のアルギニンが必要で、最適な食材には、カボチャの種、ゴマ、クルミ、アーモンド、七面鳥の胸肉、大豆、海藻などがある。
また、天然の魚から摂るオメガ3脂肪酸は、内皮機能(血管の内壁の機能)を改善し、危険な血栓を防ぐのに役立つ(*5)。オリーブオイルに備わる心臓に対する効果は、ポリフェノールの内皮機能に対する作用と血管の炎症を抑える作用から来ている(*6)。
高血圧は心臓発作、心不全、脳卒中、腎不全を引き起こす。だが、高血圧を導くものは何なのだろうか? 遺伝、食塩感受性、環境汚染、重金属なども要因の1つだが、大部分の人にとって、高血圧を引き起こす原因はインスリン抵抗性だ。腹部に脂肪がついている人は、それが高血圧を引き起こしている可能性が高い。
また、およそ40%に及ぶアメリカ人と同じように、マグネシウムが不足している人もいるだろう(*7)。マグネシウムが足りないと高血圧になる理由は、マグネシウムは血管を弛緩させる物質であるからだ。ストレス、アルコール、カフェイン、糖はみな、マグネシウムを枯渇させる。マグネシウムは、ナッツ類、種子類、豆類、緑黄色野菜など、私たちがもっと摂るべき食品に含まれている。
心臓は血管を通して血液を送り出すが、リンパ管が老廃物を浄化したあとのリンパ液を心臓に送り戻すには、身体動作、筋肉の活動、呼吸が必要だ。リンパ液の循環を改善する方法はたくさんあるが、何を食べるかも重要である。
リンパ系の機能を損ないがちな犯人は、加工食品、乳製品、糖、甘味料、過剰な塩分だ。一方、リンパ機能の改善に役立つ食品もたくさんあり、それらには、緑色の葉物野菜、フラックスシード粉(アマニ粉)、チアシード、アボカド、ニンニク、ナッツ類、海藻、柑橘類、クランベリーなどが含まれる。エキナセア、オウギ、コリアンダー、パセリなど、ファイトケミカルが豊富なハーブも効果がある。
*1 Roberts CK, Barnard RJ, Sindhu RK, Jurczak M, Ehdaie A, Vaziri ND. “A High-Fat, Refined-Carbohydrate Diet Induces Endothelial Dysfunction and Oxidant/Antioxidant Imbalance and Depresses NOS Protein Expression.” J Appl Physiol (1985). 2005 Jan;98(1):203-10.
*2 Barringer TA, Hacher L, Sasser HC. “Potential Benefits on Impairment of Endothelial Function after a High-Fat Meal of 4 Weeks of Flavonoid Supplementation.” Evid Based Complement Alternat Med. 2011;2011:796958.
*3 Neri S, Signorelli SS, Torrisi B, et al. “Effects of Antioxidant Supplementation on Postprandial Oxidative Stress and Endothelial Dysfunction: A Single-Blind, 15-Day Clinical Trial in Patients with Untreated Type 2 Diabetes, Subjects with Impaired Glucose Tolerance, and Healthy Controls.” Clin Ther. 2005 Nov;27(11):1764-73.
*4 Van Bussel BC, Henry RM, Ferreira I, et al. “A Healthy Diet Is Associated with Less Endothelial Dysfunction and Less Low-Grade Inflammation over a 7-Year Period in Adults at Risk of Cardiovascular Disease.” J Nutr. 2015 Mar;145(3):532-40.
*5 Zehr KR, Walker MK. “Omega-3 Polyunsaturated Fatty Acids Improve Endothelial Function in Humans at Risk for Atherosclerosis: A Review.” Prostaglandins Other Lipid Mediat. 2018 Jan;134:131-40.
*6 Schwingshackl L, Christoph M, Hoffmann G. “Effects of Olive Oil on Markers of Inflammation and Endothelial Function-A Systematic Review and Meta-Analysis.” Nutrients. 2015 Sep 11;7(9):7651-75.
*7 Uwitonze AM, Razzaque MS. “Role of Magnesium in Vitamin D Activation and Function.” J Am Osteopath Assoc. 2018;118(3):181-89.
(本原稿は、『医者が教える最強の不老術』からの抜粋です)