米大統領選討論会でハリス優勢も、選挙の予測が難し過ぎる理由【池上彰・増田ユリヤ】2024年9月10日、ペンシルベニア州フィラデルフィアで行われた大統領選討論会で、共和党大統領候補ドナルド・トランプ前米大統領(左)に握手を求めた民主党大統領候補カマラ・ハリス米副大統領 AFP=JIJI

終始不機嫌だったトランプ氏

池上 トランプ氏が2度目の暗殺未遂事件の標的になりました。9月15日、自身が所有するゴルフ場でプレーしていたところを狙われたそうです。

増田 ハリス氏はすぐにトランプ氏に電話して、「無事で安心した」と伝えたところ、トランプ氏も素直に喜んだと報じられています。

池上 トランプ氏は不審者の情報を提供したのが女性だったことで、「女性は男性よりも優秀だ」と言っているとか。ハリス対トランプの米大統領選挙テレビ討論会が行われたのは、その5日前の9月10日。トランプ氏が「スプリングフィールドに来た移民はペットの犬や猫を食べる」などと発言したことに注目が集まりました。

増田 ハリス氏の移民対策の不手際を追及するために持ち出したものの、討論会を放送していたABCニュースのデービッド・ミュアー氏がその場ですぐに否定しました。本当にひどい発言です。

 しかしそれ以上に重要なのは、トランプ氏がすっかり精彩を欠いていたこと。バイデン氏との討論会では生き生きとしていましたが、ハリス氏相手では勝手が違ったようです。

池上 ハリス氏の挑発にまんまと乗っていました。「あなたの集会では、聴衆が途中で帰ってしまうようですね」と言われて、カッとなって言い返していました。「日本経済新聞」記者のレポートによると、実際にトランプ氏の集会は盛り上がりを欠いており、演説も同じ話の繰り返しで、途中から聴衆が帰ってしまうそうです。ハリス氏に痛いところを突かれたのでしょう。

増田 トランプ氏は中絶についても「民主党は妊娠9ヵ月までの中絶や、生まれてきた赤ちゃんを『処刑』することも許容している」と主張。これも司会者のリンジー・デイヴィス氏に「生まれた後の赤ちゃんを殺すことが合法な州は、この国にはありません」と即座に否定されています。その場でファクトチェックされたのが気に入らなかったのか、トランプ氏は終始不機嫌でした。