また、彼らのうち体外受精を受ける夫婦は、1回平均50万円かそれ以上の治療費を負担していますが(20年 厚生労働省「不妊治療の実態に関する調査研究」ほか/2人目不妊なども含む)、取材すると、仕事を続けながら毎月クリニックに通い、「今月こそはどうだろう」と期待しては裏切られる、といった精神的ダメージのほうを「辛すぎる」と嘆く夫婦が、圧倒的に多いのが実情です。

女子大学生が友達と気軽に話す
「卵子を冷凍保存してきちゃった」

 そんななかで近年、話題なのが「卵子凍結」です。13年、日本生殖医学会が事実上、健康な女性の卵子凍結を認めるガイドラインを発表すると、19年までの6年間で、卵子凍結の治療総数はなんと約50倍にも増えました(20年度「倫理委員会 登録・調査小委員会報告」)。

 17年、私がある大学の学食で、女子大生4人と談笑していた際も、1人が「昨日、卵子を冷凍保存してきちゃった」と切り出しました。すると同席した他の3人が、「えっ?どこのクリニック?」と身を乗り出し、「元気な卵子って『お守り』代わりだよね」「結婚しないで、『精子』だけ探せばいいんじゃない?」と言い出したのです。