私がいま、こうした議論を深めるべき、と考える理由は2つあります。1つは、国や日本産科婦人科学会が一定のガイドラインを作らないと、誤った情報が流布されてしまうから、もう1つは、「卵子凍結」が、新たな出産の道を切り開くかもしれないからです。
まずは、誤った、あるいは偏った情報認識についてです。
一般に、女性の体内で胎児期に作られた卵子は、産まれてから年齢と共に減少していくと考えられています。
ある研究報告によれば、34歳の女性の場合、30個の卵子があれば95%の確率で(少なくとも1人の)赤ちゃんの誕生に結びつくとみられますが、同じ個数の卵子があってもこの確率が、37歳では9割を切り(約87%)、42歳では5割を切ってしまう(約49%)可能性が指摘されているのです(日本産科婦人科学会サイト/R.H.Goldman. et al.[2017],Predicting the likelihood of live birth for elective oocyte cryopreservation:a counseling tool for physicians and patients, Human Reproduction,32(4))。
では、男性のほうはどうでしょうか。00年に報告された疫学調査によれば、実は35歳以上の男性も、25歳未満の男性に比べて「1年以内に妊娠に至る確率が2分の1」になる可能性が示唆されています(Ford W.C et al.[2000],Increasing paternal age is associated with delayed conception in a large population of fertile couples:evidence for declining fecundity in older men, Human reproduction,15(8))。