デジタル化により
お金の重みはどんどん軽くなる
ただ、気を付けてほしいことがある。今どき、給与を現金で受け取るシーンは少なくなった。ほとんどが銀行口座振り込みであり、通帳に印字された数字だけがお金の証だ。
引き出して紙幣を目にするまでは、これもまたバーチャルなお金といえる。それがデジタル給与になることで、さらに変容していく予感がする。
アプリ内にあるのはお金というより、ポイントに近い疑似仮想通貨のようなイメージだ。だからというわけではないが、あまりお金としての重みは感じられない。
財布から現金を出して支払う時と、コード決済で支払う時では、なんとなくお金を使った意識が違うもの。払った金額は表示されるが、あまり実感を伴わない。財布の中からお金が減っていくのは悲しいが、残高表示の数字が減ってもそこまで強く感じないものだ。
デジタルマネー化は、お金の重みをより軽くしていく変換作業といっていい。
それでも今までは、チャージというワンクッションを挟んでいたため、アプリにこれだけの金額を入金したという意識を持てたが、給与として自動的に残高に加わるようになると、やや心配になる。自分なりの歯止めを設けないと、あっという間に使ってしまうのではないかという危惧だ。
支払い額を意識することなく、スムーズに、どんどん気軽に使ってほしい――決済事業者の狙いはそっち側にあるということは、よく覚えておこう。