PayPayが
先陣を切った理由
政府が「デジタル給与」の検討を始めて久しいが、もともとは日本で働く外国人労働者の利便性を図る目的もあった。給与を支払うには振込先として銀行口座が必要になるが、外国人が日本の銀行に口座を開くのはハードルが高い。決済アプリのアカウントさえあれば、そこに給与を送金することで解決できるというわけだ。
ところが、コロナ禍で急速に国内のキャッシュレス化が進み、特にスマホ決済のシェアが一気に伸びた。そんな下地もあり、各決済事業者も関心を強めたが、実現までには解決すべき課題もあったという。
雇用側の企業にとって手続き等の新たな負担やインフラ整備のコストが発生しないか。不測の事態が起きた時に労働者の給与をどう保全するのか。万が一、給与が振り込まれる資金移動業者が破綻しても、給与は保全され、確実に本人の元に返還されなくてはいけない。
そのために全給与口座(アカウント)に対し弁済のために資金を供託する必要があり、事業者に求める金銭的なコスト負担が重かった。しかも、最後の給与入金日から10年間は払い戻しに応じなくてはならないとされており、時間的な負担も重なる。こうなると、資金力がない大手でないと参入はなかなか難しい。
そんな中でPayPayがファーストペンギンになったのは、新しいジャンルでの一番手となるメリットを考えてのことではないか。コード決済サービス参入の際に華々しく「100億円あげちゃうキャンペーン」をぶち上げて大量にユーザーを確保、一気にコード決済アプリのトップへと駆けのぼったのと同じ思考だ。
デジタル給与を採用する企業へも、従来の給与振り込みと大差がない方法を提供している。従業員はPayPayが個人ごとに設定した「給与受取口座への入金用口座番号(銀行口座番号)」を会社側に伝え、その口座番号に給与を振り込むと、自動的に「PayPayマネーアカウント(給与受取)」にチャージされるとの方式を取った。これなら今までと比べ、新たな作業負担は生じにくい。
この手法が世間に認知され、実績ができれば「うちも考えてみよう」という企業も出てくるだろう。他に楽天ペイやauPAYなどが申請中というが、後続者としては「PayPayとはここが違う」という特徴を打ち出す必要がでてくるだろう。