キャッシュレス化の波に乗って「給与のデジタル払い」が現実のものとして動き出してる。現金ではない形でどのように支払われるのか。金額に上限はあるのか。そして、受け取る側が気をつけることとは?第一号の資金移動業者として事業者指定を受けたPayPayのサービスを見ながら解説する。(消費経済ジャーナリスト 松崎のり子)
いよいよデジタル給与が現実に
その先に待っている世界とは
会社からの給料がPayPayに入金される――キャッシュレス化もここまできたかという日が訪れた。現金でなくQRコード決済アプリの残高として受け取れる「給与のデジタル払い」がそれだ。
制度としては2023年4月に解禁されていたが、ようやくその第一号の資金移動業者としてPayPayが厚生労働省から事業者指定を受けたのだ。さっそくソフトバンクグループ10社が9月から支払いを開始したとのニュースを見聞きした人もいるだろう。
PayPayは、言わずもがなコード決済の最大手であり、日常的に一定額をチャージして使っている人なら給料の一部が自動的に残高に反映されるのは便利に違いない。これまで銀行口座やPayPayカード、あるいはいちいちATMから現金を引き出してコンビニでチャージする手間をかけていた人には朗報だろう。
逆に、現金ではない形で支払われることへの懸念を持つ人もいるはずだ。その点は心配しすぎは無用で、まずデジタル給与を採用するかどうかは、働く側と企業側との間に労使協定が締結されている必要がある。会社が一方的に「来月からデジタル給与にします」ということはなく、採用されたとしても希望しない従業員へ強制できない。
また、金額も決められており、保有できるデジタル給与の上限額は20万円まで。PayPayでは「PayPay給与受取」を利用したユーザーの残高は、通常のPayPayマネーとPayPayマネー(給与)の合計で100万円までだ。それをオーバーしたデジタル給与分は、現金として銀行口座に送金される。
現在のところは給与の一部をデジタル化するところからのスタートで、現金受け取りとデジタル給与の併用となる。なお、デジタル残高で受け取った場合でも、現金として登録した銀行口座に払い出すことができ、その際の手数料は、月一回は無料で行うと定められている。