兵士たちは遠く離れた基地ではなく町中で暮らすことになった。そのほうが住民たちは安心して暮らせるはずだ。住民たちが安心感を抱けば、反乱分子たちと敵対するようになるだろう。反乱分子たちがいなくなれば、この戦争は終わる。住民が勝ち、戦争に勝つ。それは理想だが、ブレントはその理想を信じていたし、だからこそ浄化槽からあの死体を取り出さなければならなかった。
「だれかが、人間を侮辱するのにこれ以上はないというやり方でこの男を侮辱したわけだ」とブレントは言った。「そして『これが浄化槽から死体を取り除く方法だ』と書いてある作戦ノートなんてものはないってわけだ」
作戦終了と思い始めた頃
巨大な権力が力を解き放った
それは戦争が強いる不条理な会話だったが、アメリカ軍がなにをしようとしているか反乱軍は見抜いていたので、結局はどうでもいい会話になった。兵士たちが引っ越してこないうちに、ある晩その工場の建物に爆弾がしかけられ、それで建物は吹っ飛んだ。
しかし爆破されるまでずっとブレントは、浄化槽の死体をなんとかしようとしていた。非常識だと思ったからではなく、倫理の問題として受け止めていたからだ。