考えてみたら私の人生は、長い落語の旅のような感じでしょうか。談志という最強のツアコンに振り回されながら、一般的には得難い経験をさせてもらってきたからこそ、本にする値打ちがあると見込まれているのでしょう。

 そして、この『目黒のさんま』に再び戻ると、未知なる下魚に挑戦してみるという“投資”が、殿様の真の味覚を呼び起こしたとも把握し直すことができるでしょう。

 いや、もっと言うならば、「味覚には優劣がない」という結論なのかもしれません。何年か前に海外旅行でおいしいものをたくさん食べたことがありましたが、その旅行中で一番美味かったのが、深夜のホテルで食べたカップラーメンでした(笑)。

 無論、それこそ経験してみて初めて気がついたことであります。

 やはり、経験が肝心なのです。

 経験のためにこそ、お金を使いましょう。そのために働きましょう。