落語「長短」に見る
それぞれのマイペース
気長な長さんと気短な短七は、性格は真逆にもかかわらず、子どもの頃から気の合う友人同士。
ある日、長さんが短七の家へ遊びにくる。戸の前でウロウロ、中をのぞいたりしている長さんに対して、短七はじれったくてしょうがない。戸を開けて長さんを引っ張り込んで、饅頭を食えと勧める。しかし、饅頭を食べはじめた長さんは、いつまでも口の中で牛みたいにくちゃくちゃやっている。見かねた短七は、丸飲みの見本を見せるが、のどに詰まって目を白黒させている。
今度は長さん、煙草に火をつけようとしたが、なかなかつかない。短七は見ているだけでイライラしてくる。やっと火がついて吸い出したが、長さんののんきな吸い方に我慢ができない。短七は見本を示そうと、「煙草なんてものは、こうやって吸って、こうやってはたくんだ」と気短に煙草を吸うのだが、そのとき火玉が袖口からすぽっと中に入ってしまった。気がつかない短七に長さんは恐る恐る、
「短七つぁんは、気が短いから、人に物を教わったりするのは嫌えだろうね」
「ああ、でぇ嫌えだ」
「俺が、教えても、怒るかい?」
「おめえと俺とは子どもの頃からの友達だ。悪いとこがあったら教えてくれ。怒らねえから」
「ほんとに怒らないかい……?なら言うけどね、さっき、短七つぁんが威勢よく叩いたうちの一つの火玉で、着物の袂に入ったのがあって、煙がモクモク出てきて、だいぶ燃え出したようだよ。ことによったら、そりゃあ、消したほうが……」
「バカ野郎!何だって早く教えねえんだ。こんなに焼けっ焦がしができたじゃねえか!」
「ほおらみろ、そんなに怒るじゃあねえか、だから教えねえほうがよかった」