その場ではネガティブな発言をせず、後で伝える

 ネガティブなことも正直に伝える。ただし、その場では言わない。

 マネージャーや他の人が士気を高めよう、場を盛り上げようと思ってポジティブに振る舞っているのに、水を差すように「できません」「課題があります」などネガティブな発言をされたのでは、マネージャーや周りの人たちが気分を害するかもしれない。場の空気も凍り付き、かえってギスギスしてしまう。

「気になったこと」「懸念」「不安」は、後でマネージャーや本人に相談として伝えよう(決して不平・不満のスタンスを取らない)。そのほうが聞き入れられやすい。

 あるいは、会議の中盤や後半などに懸念点を洗い出す時間を設ける。このように、明示的に「ここではネガティブな意見を言ってよい」「真逆の意見を歓迎する」と伝わる場を設けるのも手だ。

「良いこと」「悪いこと(改善したいこと)」をチームで書き出す

 年度末の振り返りや活動総括の場などを活用し、あえて「ネガティブなこと」をグループワーク形式で話し合ってみるのも手だ。

「良いこと」「悪いこと(改善したいこと)」の両方を書き出すのがポイントだ。ネガティブなことを言い合うだけでは場も暗くなる。ポジティブなことも言語化することで、浮かれすぎず沈みすぎずの温度感を保ちながら、健全な批判が行われる場を創ることができる。

 なお筆者は「手を挙げて発言してください」ではなく「付箋に書き出しましょう」というやり方を推奨している。テキスト(書き文字)なら言いやすいこともあるからだ。

ポジティブとネガティブを必ずセットで伝える

 伝え方による工夫も十分可能である。ネガティブな意見を述べる際は、必ずポジティブなコメントとセットで伝えるようにしてはどうだろう。

 PNIというフレームワーク(型)がある。Positive, Negative, Interestingの頭文字をとったものだ。
 相手に意見やコメントをするとき、まずは良い面(Positive)を示し、つぎに懸念や考え直したほうがよい点(Negative)などを指摘、最後に相手への興味関心や期待の一言(Interesting)を添える。たとえば、こんな伝え方だ。

「部長、先ほどの会議で提案いただいた企画、斬新で面白かったです(Positive)。ただ、一つ懸念点がありまして、もしかしたらメンバーそれぞれに思い描いているユーザー像が違う気がしています。まずはそこを話し合ってすり合わせるのがよいかと思いました(Negative)。部長がお持ちのユーザー像を聞けば皆にとって勉強になると思うんです(Interesting)」

 PNIを意識して発言するだけでも、ネガティブな意見も言いやすく受け入れられやすい空気を創ることができるだろう。
 その他、アサーティブ・コミュニケーション、クリティカルシンキングなど、健全な批判や建設的な対話をするための技術はいくつもある。それらを皆で身につけるのもポジティブな方法である。

一歩踏みだす!

 ・ネガティブな意見は「後で」「相談として」本人にそっと伝える
 ・振り返り会などで、チームで書き出すのも有効
 ・PNIのフレームワークを使って伝えてみる

(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)

沢渡あまね(さわたり・あまね)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。