「あなたの職場では、メールや文書などの作成時にいちいち職位順を気にしていませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「並び順にこだわる職場」を変える方法を紹介します。
並び順にこだわる組織
作文時のお作法が存在する組織は少なくない。そのなかで、特筆したいものがある。
メールの宛先は職位順に並べる。
議事録に記す出席者の名前も職位順。
部署名の並び順にも気を遣う。
Webサイトや社内の配布物に表記するお取引先一覧や協賛企業の名称の並び順にもやたら気を遣う。
このように並び順に厳しい組織がある。
上位者を敬う、他社に気を遣う。それを怠るのは相手に失礼に当たる。その文化が色濃く、礼儀正しさを重視して宛先の順序や名称の表記順序に細心の注意を払う組織は少なくない。
礼儀へのこだわりが「失礼」を生むことも
「日本企業は“礼儀正しく時間を奪う”」
筆者の変革の同志でもある、澤円(さわまどか)氏の名言である。
円滑な関係構築やコミュニケーションのためには、一定の礼儀正しさは欠かせない。しかし礼儀作法にこだわりすぎるあまり、時間や気力を遣いすぎるのも問題である。
相手の職位を調べたり(いつのまにか変わっていることも)、チェックしたりするのに時間がかかって、メールや議事録の送付が遅くなる。受け取る方の待ち時間も奪うことになる。並び順を修正するためだけに書類やデータを直していたら、余計な時間やお金が際限なく発生する。
それに礼儀への過度なこだわりは新たな「失礼」を生む火種にもなる。部長に昇進したのを知らず課長と書いてしまい失礼だと言われる。職位を表記しなければ生まれなかった失礼である。
また、つねに役職を意識することは上下意識を植え付け、統制管理的な体質を強化する。自社内で済むならまだよいが、他社の振る舞いにも不寛容になることも。形式ばかりにとらわれて相手を責めていては、社内外問わず共創は難しいだろう。
名前の並び順問題を解決する、魔法の一言
「面倒くさいから、表記の順序にこだわるのやめましょう!」
こう言えたら、どんなにスッキリすることか。筆者は空気を気にせずに言ってしまうこともあるが、なかなか従来の組織文化にNo(ノー)を突き付けるのは難しいものだ。もっとも礼儀作法には合理性もある。
そこで、名前の並び順問題を穏便に解決する魔法の一言をお教えしよう。メールの本文や、文書やWeb媒体で人や組織の名称を連ねる必要がある際、欄の冒頭か末尾にこの一文を付け加えよう。
「※五十音順」
正しく五十音順に並んでさえいれば誰にも文句を言われない。言わせない。
もし何か言われたら「不要なトラブルを避け、公平性を期するためです。ご理解ください」で返す。職位の変更にも強い無敵のお作法だ。
イベントなどで参加企業や協賛企業を表記する場合は次の一文も有効である。
「※受付順」
・人物名や社名の表記の並び順にこだわるのをやめてみる
・「五十音順」「受付順」などの一言で煩わしさを軽減する
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。