私たちは日々、何かを「読んで」いる。SNSやニュースメディア、仕事のメール、友人とのチャット。そのため、現代人は膨大な量の言葉によって脳が疲れ果てていて、集中力と忍耐力は低下し、さらに言葉づけになっているという。現在670万の定期購読を誇るデジタルメディア「アクシオス」の共同設立者3人による著書『Simple「簡潔さ」は最強の戦略である』は、「スマート・シンプル(賢明な簡潔さ)」の重要性を説いている。そして、それを実現するために必要なのが、「言葉選び」だという。人に何かを伝えるときに適切な言葉選びとはどのようなものか。本記事では、本書の内容をもとに紹介する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
伝わりづらいテキストコミュニケーション
つらつらと長文で書かれたメールを読んで、「結局何の連絡なんだろう」と思ったことはないだろうか。
頭にスムーズに入ってこなくて、一番大事な部分を読み飛ばしてしまったという経験をしたことがある人もいるに違いない。
文章によるコミュニケーションは、決して伝わりやすいものではない。電話を1本入れた方がよっぽど話が早いことは多々ある。
しかし、チャットツールが進化した現代において、テキストコミュニケーションは増えるばかりだ。
誤解なく、わかりやすく相手に伝えるには、どうしたらいいのだろうか。
「スマート・シンプル(賢明な簡潔さ)」を提唱する、「アクシオス」の共同設立者3人は、ビジネス文書で使うべき表現のことを次のように語る。
ストレートに伝わる言葉選びと表現が、テキストコミュニケーションにおいては大事なのだ。
「曲がりくねった表現」をしてはいないか
スマートで引き締まった文章を学ぶ前に、曲がりくねった文章とはどういうものか考えてみよう。
本書には、次のような例が載っている。
▶︎恋人に向かってこうは言わない。「記録的高温が西部と南部を襲い、この地域の最高気温が38度近くになるため、近くの空調設備を利用することにしよう」。そんなばかな! こう言うはずだ。「暑いな。中へ入ろう」(P.124)
ここまで極端に曲がりくねった表現をすることはないにしても、何かしら理解してもらおうと思ったときに、私たちは言葉を尽くしすぎる傾向にある。
では、一体どうしたらいいのだろうか。
伝わりやすい「簡潔なメール」の7つのコツ
本書では、メールにせよ、社内での連絡事項にせよ、「大事なお知らせ」を簡潔にし、伝わるものにするためのヒントが書かれている。それは、次の7つだ。
1.「短い」に勝るものなし
7文字より5文字、5文字より3文字のほうが力強い。「アクシオス」では、タイトルや件名にはできる限り短い単語を使っているのだそうだ。
2.「強い言葉」で語れ
強い言葉とは、鮮明で的確、そして何より「目に見えるもの」を指す。「具体的なもの」とも言える。反対に弱い言葉とは、抽象的な言葉である。
3.「弱い言葉」を追放せよ
デートでは口にしないような、なよなよした言葉、もしくはオタクっぽい言葉は使わない。弱い言葉は他にも次のようなものがある。
もったいぶった言葉:頭が良さそうに聞こえると思って使うと、実際には間抜けに聞こえる言葉のこと。以下の例では、カッコ内が適切な言葉だ。
・騒然たる(うるさい)
・コンクラーベ(会議)
・言いまぎらす(嘘をつく)など
誰も口にしない言葉:報道や学術界、シンクタンク、論文などでしか見かけない言葉のこと。
・論議(話)
・遍在する(どこにでもある)
・困難な課題(問題、混乱)など。
4.「ぼやけた言葉」を避ける
「~する可能性がある」「~かもしれない」「~するおそれがある」など。これらは実際に起きていることは何も伝えていない。あいまいでぼやけた情報で人の時間を無駄にしてはいけない。
5.「能動的な言い方」にする
能動的な言い方にすると、誰が何をするかはっきりわかる。小学校で習った「誰が」「何を」「する」というシンプルな表現こそが、どんなときも人の心を引きつける。
6.「歯切れのよい表現」を使う
短くて歯切れがよく、パンチが利いた表現は記憶に残りやすい。例えば、次のようなものだ。
・売上が落ちた。
・収益が急増した。
・私はやめた。
7. すべての言葉を「総チェック」する
すべての言葉について、シンプルで強い言葉に置き換えられないか確認する。置き換えるたびに、言葉の力は強くなる。
これら7つのポイントを意識することで、より効果的なテキストコミュニケーションが可能になるだろう。
明日のメールから実践してみてほしい。きっといつもよりも相手とコミュニケーションが取りやすくなるに違いない。