「ソフトバンク創業から20年、いままでそういう無茶な戦いっていうのはほとんどやってない」
孫はいかなる場合も充分に準備をして、不利な状況にある場合には極力、戦いは挑まないようにしてきた。
だが、孫はあえて自分たちよりも圧倒的に大きな相手であるNTTに直接戦いを挑んだ。東西に分割されたとはいえ、すべて持ち株会社の下にある。実態は旧電電公社時代の独占のまま。管路も電柱も局舎も独占的に使っている。その弊害がさまざまな形で起きていた。
立ちはだかるNTTの壁
孫は総務省に乗り込んだ
Yahoo!BB開通に必要なNTTの局舎内での接続工事の妨害。
たとえば、電話の名義とYahoo!BBの申込者の名義が違っていると、それだけで延々と待たされる。あるいは、国民の共通財産である電柱もほぼ独占している。ネットワーク機器を局内に置くための申請書類は煩雑かつ作成に多大な時間がかかる。
NTTの“牛歩”作戦。局舎のなかのコロケーションサービス(ネットワーク設備の設置)や局舎同士をつなぐダークファイバー(敷設されていながら使用されていない光ファイバーのこと)の利用も、不公平きわまりない。
民営化されたのは形だけ、NTTはいまだ独占的支配のままなのだ。公平な競争が行なわれていない。孫は怒りをあらわにする。
「この戦いは避けるわけにはいかない」