信長でいえば桶狭間。圧倒的に不利な立場にあるが、どうしてもここだけは戦わなければならない。

 2001年6月29日、孫は総務省に乗り込んだ。

 必死の覚悟だった。

「NTTは、もうウソばかり言う。ダークファイバーもあるのにないと言う」

 ダークファイバーで何局かを結んでリング(環)にする。だが、どこかが欠けるとリングにならない。

「ガソリンをかぶって着火する」
総務省の役人に凄んだ孫の本気

 総務省に電話をしたり、直接抗議に行ったりしたが、担当の役人は話を聞くだけでなんのアクションも起こさない。

 ついにその日、孫は最後の決断をした。

「100円ライターぐらい持っとるでしょ、それ借りますから」

 孫は総務省の役人に言った。

「えっ、どうして?」

 孫と同年代の役人は驚きの声を上げた。

「ガソリンかぶるんですよ」

 演技などではない。真剣だ。